犬が水をよく飲む・おしっこが増えた|考えられる病気と受診の目安

「最近、水入れの減りが早い気がする…」「おしっこの量もシートの吸収がすごい」「夜中に水を飲む音で目が覚めるようになった」――そんな変化に気づいて、少し気になっていませんか?
犬が水をたくさん飲むようになる・おしっこの量が増えるという変化は、「多飲多尿(たいんたにょう)」と呼ばれ、体の中で何かが起こっていることを教えてくれる大切なサインです。暑い時期や運動後に一時的に増えることはありますが、毎日続く・だんだん増えているというときは、病気が隠れていることも少なくありません。
この記事は 窪木 未津子(院長・獣医師) が監修しています。気になる症状がある場合は自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談してください。本記事では、犬の飲水量の目安と家庭での測り方、多飲多尿で疑われる代表的な病気、動物病院で行う検査、受診の目安までをやさしく整理していきます。
✅ この記事のポイント
- 犬の飲水量の目安は体重1kgあたり1日50〜60mlまで、100mlを超えると多飲の可能性があります
- 多飲多尿で代表的な病気は腎臓病・糖尿病・クッシング症候群・子宮蓄膿症などです
- 寒くなると普通は飲水量が減るので、秋冬に増えるのはより注意が必要です
- 血液検査と尿検査で、多くの原因は早い段階で見つけられます
- 多飲多尿は健康診断で早期発見しやすい代表的なサインです
Contents
犬が1日に飲む水の量はどれくらい?目安と測り方
結論からお伝えすると、犬の1日の飲水量の目安は体重1kgあたりおよそ50〜60ml程度までと言われています。これを大きく超えてくると、多飲の可能性が出てきます。
体重別の飲水量の目安
一般的に、体重1kgあたり100mlを超えると「多飲」と判断する目安になります。もちろんその日の気温や運動量、食事内容(ドライフードかウェットフードか)によっても変わりますが、下記の表を目安にしてみてください。
| 体重 | 1日の目安 | 多飲の目安 |
|---|---|---|
| 3kg | 〜180ml程度 | 300ml以上 |
| 5kg | 〜300ml程度 | 500ml以上 |
| 10kg | 〜600ml程度 | 1,000ml以上 |
| 20kg | 〜1,200ml程度 | 2,000ml以上 |
家庭での飲水量の測り方
病院で「水はどれくらい飲んでいますか?」と聞かれても、意外とはっきり答えづらいもの。実は、家で1〜2日メモを取るだけで、おおよその飲水量が把握できます。
- 朝、水入れに入れた水の量を計量カップで測って記録する
- 翌朝、同じ時間に残った水の量を測る
- 「入れた量 − 残った量」が、その犬が1日に飲んだ量の目安
- 複数の水入れがあるときは、全部まとめて計算する
- こぼれた・蒸発した分も多少はあるので、だいたいの数字で OK
ウェットフードや手作りごはんなど、食事に水分が多く含まれる場合は、飲む水の量そのものは少なめになる傾向があります。フードを変えていないのに水の減りが急に早くなったというときは、変化のサインとして注目してみてください。
おしっこの量・回数もあわせて観察
多飲とセットで起こりやすいのが多尿です。「ペットシートがいつもよりずっしり重い」「交換の回数が増えた」「散歩中に何回も立ち止まる」「薄い色のおしっこが大量に出る」といった変化は、おしっこの量が増えているサインかもしれません。

多飲多尿で疑う代表的な病気
犬の多飲多尿の背景には、いくつかの代表的な病気が隠れていることがあります。どれも早めに見つけて治療やコントロールを始めることで、進行をゆるやかにできる病気ばかりです。「年のせい」で片付けず、まずは一度チェックしてもらうことが大切です。
慢性腎臓病・腎不全
腎臓は、血液をろ過しておしっこを作る臓器です。機能が落ちてくるとおしっこを濃縮する力が弱くなり、薄いおしっこがたくさん出るようになります。その分、体の水分が足りなくなり、水をたくさん飲むようになります。
シニア期の犬にとても多い病気で、初期は「水をよく飲む・おしっこが増える」以外にはっきりした症状が出にくいのが特徴。進行すると食欲低下・体重減少・嘔吐などが現れます。くわしくは犬の命に関わる腎不全の記事もあわせて参考にしてみてください。
糖尿病
血糖値を下げるインスリンの働きが足りなくなり、血液中の糖がおしっこに漏れ出す病気です。糖と一緒に大量の水分が引っ張られて出ていくため、強い多尿と、それを補うための多飲が見られます。
「よく食べているのに痩せてきた」「水の減りがものすごく早い」「おしっこがベタつく気がする」というときは、糖尿病の可能性もあります。進行すると命に関わる状態(糖尿病性ケトアシドーシス)になることもあるため、早めの受診が大切です。
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
副腎からコルチゾールというホルモンが過剰に分泌される病気で、中〜高齢の犬に多く見られます。多飲多尿のほか、おなかがぽっこり膨らむ、左右対称に毛が薄くなる、皮膚が黒ずむ・薄くなる、よく食べるのに筋肉が落ちるといった変化が特徴です。
ゆっくり進行することが多く、「年のせいかな」と見過ごされがちな病気のひとつです。血液検査やホルモン検査で診断します。
子宮蓄膿症(避妊していないメスの場合)
避妊手術をしていないメス犬で特に注意したいのが子宮蓄膿症です。子宮の中に膿がたまる病気で、発情後1〜2か月の時期に発症しやすいのが特徴。多飲多尿・元気食欲の低下・陰部からの分泌物・おなかの張りなどが見られます。
進行が早く、放置すると命に関わる緊急性の高い病気です。「最近水をよく飲むな」と気づいたタイミングで、避妊していないメスの場合は特に早めに受診してください。
その他の原因
このほかにも、肝臓の病気、高カルシウム血症、尿崩症、ステロイドなど一部のお薬の影響、精神的なストレスなど、多飲多尿を起こす原因はいくつもあります。見た目だけで原因を絞るのは難しいため、やはり検査が頼りになります。
⚠️ こんなときは要注意
「水をよく飲む」ことに加えて、食欲が落ちた・吐く・ぐったりしている・痩せてきた・陰部から膿が出ているといった症状があるときは、様子を見ずにできるだけ早く動物病院を受診してください。特に避妊していないメス犬の多飲多尿は、子宮蓄膿症の可能性もあり急を要します。
「秋冬なのに水を飲む量が増えた」はより要注意
季節の切り口も、ぜひ知っておいてほしいポイントです。普通は気温が下がる秋〜冬にかけて、犬の飲水量はむしろ少なめになる傾向があります。それなのに水をよく飲むようになったときは、より病気のサインとして意識したいところです。
夏と冬で飲水量は変わるのが自然
夏は暑さや散歩での発汗(犬は主にハアハアと口で熱を逃がします)で水分を多く必要とするため、飲水量は自然と増えます。一方、涼しい季節は体から失われる水分が減るため、水の減りがゆるやかになるのが普通です。
秋冬に飲水量が増えるときに考えたいこと
気温が下がっているのに水の減りが早い、おしっこの量が増えている――そんなときは、季節による生理的な変化ではなく、体の内側で何か起きているサインと考えたほうが安心です。腎臓病・糖尿病・クッシング症候群などは、季節に関係なくじわじわ進行していく病気です。
暖房による乾燥との区別
一方で、冬は暖房による乾燥で、少し飲水量が増える犬もいます。「エアコンのそばで寝ているから少し増えた」程度なら生理的な範囲のことが多いですが、目安量を大きく超える・毎日続く・おしっこの量もあきらかに増えている場合は、病気の可能性を考えて受診しましょう。
💡 ワンポイント
「夏より冬のほうが水の減りが早い」と感じたら、ぜひ1〜2日飲水量を測ってメモしておきましょう。受診時にその数字を伝えるだけで、獣医師が原因を絞り込みやすくなります。
動物病院ではどんな検査をするの?
多飲多尿で受診したとき、動物病院では血液検査と尿検査を基本にして、原因を一つひとつ切り分けていく流れが一般的です。多くの病気は、この基本検査でかなりの手がかりが得られます。
問診で生活の様子をくわしく聞きます
いつから水の量が増えたか、1日どれくらい飲むか、おしっこの量や回数、食欲や体重の変化、避妊・去勢の有無、使っているお薬など、普段の生活についてていねいに伺います。家で測った飲水量のメモがあると、とても役立ちます。
血液検査でわかること
血液検査では、腎臓の数値(BUN・クレアチニン・SDMAなど)、血糖値、肝臓の数値、電解質、カルシウム値などを調べます。これだけでも、腎臓病・糖尿病・肝臓の病気・高カルシウム血症などの大まかな当たりがつくことが多いです。クッシング症候群が疑われるときは、追加でホルモン検査を行います。
尿検査でわかること
尿検査では、おしっこの濃さ(尿比重)、糖やタンパクの有無、細菌感染の有無などを調べます。多飲多尿のときは、おしっこが薄くなっていること(低比重)が確認できることが多く、原因を絞り込む大きな手がかりになります。おしっこは当日の朝一番のものを持参すると、より正確な評価ができます。
必要に応じた追加検査
基本検査の結果に応じて、超音波検査(腎臓・副腎・子宮など)、レントゲン、ホルモン検査などを追加します。子宮蓄膿症が疑われるメス犬では、超音波で子宮の中の状態を確認することが診断の決め手になります。

健康診断で早く見つかる代表的なサイン
多飲多尿は、健康診断で早期発見につながる代表的なサインのひとつでもあります。初期の腎臓病・糖尿病・クッシング症候群などは、おうちでの変化がわずかで気づきにくくても、血液検査や尿検査で先に異常が見つかることが少なくありません。
シニア期は年1〜2回のチェックが安心
犬は7歳ごろから中高齢期に入り、徐々に内臓の病気が増えてきます。シニア期以降は、年1〜2回の健康診断で血液と尿を定期的にチェックしておくと、多飲多尿が目に見えて増える前の段階で変化をキャッチできます。
若い犬でも油断しないで
若い犬でも、糖尿病・尿崩症・先天的な腎臓の問題などで多飲多尿が出ることがあります。「まだ若いから大丈夫」と決めつけず、気になる変化があれば年齢に関わらず相談してみてください。
水を制限するのは危険
「飲みすぎだから水を減らそう」と考えてしまう方がいますが、これはとても危険です。多飲は、体が水分を必要としているサイン。無理に水を制限すると、急激な脱水から命に関わる状態になることもあります。水はいつでも新鮮なものを自由に飲める状態にしておき、「量が多い」と感じたら、原因を調べるために受診を選んでください。
健康診断の具体的な内容や頻度については、犬の健康診断は何歳から必要?頻度の目安と検査でわかることもあわせて参考にしてみてください。
まとめ
犬が水をよく飲む・おしっこが増えたという変化は、「多飲多尿」と呼ばれる大切なサインです。体重1kgあたり1日100mlを超えて飲むようであれば、まずは一度動物病院でチェックしてもらうのが安心です。
背景には、慢性腎臓病・糖尿病・クッシング症候群・子宮蓄膿症など、早く見つけるほどコントロールしやすい病気が隠れていることがあります。特に、気温が下がる秋〜冬に飲水量が増えるのは、季節の生理的な変化とは逆方向。「冬なのに水の減りが早い」と感じたら、より注意して観察してあげてください。
多飲多尿は、血液検査と尿検査で手がかりがつかみやすい症状でもあり、健康診断で早期に見つかる代表例です。水を無理に減らすのではなく、1〜2日の飲水量を測ってメモし、そのデータを持って受診する――それだけで、愛犬の体の変化を早くキャッチする大きな一歩になります。
よくある質問
Q. 犬が1日にどれくらい水を飲んだら多いと言えますか?
A. 一般的な目安として、体重1kgあたり1日100mlを超えると「多飲」と考えます。たとえば5kgの犬で500ml以上、10kgで1,000ml以上が続くようなら、一度動物病院で相談してみましょう。気温や食事内容でも変わるため、1〜2日まとめて測ってみると判断しやすくなります。
Q. 夏場に水をたくさん飲むのは心配ですか?
A. 気温が高い時期は、体温調節のために飲水量が自然に増えます。これは生理的な範囲のことが多いです。ただし、目安量を大きく超えて飲む・おしっこの量もあきらかに増えている・食欲低下などほかの症状がある場合は、暑さだけが原因ではないこともあるため受診をおすすめします。
Q. 水を飲みすぎているので、量を制限してもいいですか?
A. 自己判断で水を制限するのは危険です。多飲は体が水分を必要としているサインで、無理に減らすと急激な脱水から体調を大きく崩す恐れがあります。水はいつでも自由に飲める状態にしたうえで、原因を調べるために動物病院で検査を受けてください。
Q. おしっこの量が増えたかどうかは、どうやって判断すればいいですか?
A. ペットシートの吸収具合(1枚あたりの重さ・交換回数)、散歩中の排尿の回数や1回あたりの量、おしっこの色(薄い黄色〜ほぼ透明が続くか)などが目安になります。「シートの交換頻度が倍になった」「散歩のたびに大量に出る」といった変化があれば、多尿のサインかもしれません。
Q. 若い犬でも多飲多尿で病気のことがありますか?
A. はい、若い犬でも糖尿病や尿崩症、先天的な腎臓の問題などで多飲多尿が見られることがあります。年齢に関係なく、いつもと違う飲み方・おしっこの量が続くようなら受診を検討してください。早く見つかるほど、治療の選択肢も広がります。
監修:窪木 未津子(院長・獣医師)/麻布大学獣医学部卒業、ヤマザキ動物専門学校卒業。群馬県出身。埼玉県・東京都の動物病院での勤務を経て、富士見台どうぶつ病院 院長。獣医師・動物看護師の資格に加え、トリミングやドッグトレーニングの知識・技術をもち、暮らしのちょっとした悩みから病気・ケガの相談まで幅広く対応しています。
中野・練馬・杉並エリアで動物病院をお探しの方へ
富士見台どうぶつ病院は、西武池袋線「富士見台駅」南口より徒歩2分。中野区・練馬区・杉並区を中心に、鷺ノ宮・中村橋・下井草など近隣エリアの飼い主さまにご来院いただいています。犬が水をよく飲む・おしっこが増えた・痩せてきたなど、いつもと様子が違うと感じたら、自己判断せずお早めにご相談ください。WEB予約は24時間受付中です。
アイキャッチ画像: Photo by Doug Brown on Pexels


