犬の命に関わる腎不全とは?原因や症状、日頃からできる対策をご紹介
「腎不全」という言葉は聞いたことがあるものの、具体的にどのような病気か知らないという方も多いのではないでしょうか。腎臓がダメージを受けて十分に機能しなくなる状態を腎不全といいますが、この病気によって命を落としてしまうわんちゃんも少なくありません。
今回は、犬の腎不全の原因や症状、一般的な治療法について解説します。飼い主さまに注意していただきたいこともあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
犬の腎不全とは
腎不全とは、腎臓の機能が低下することにより、全身にさまざまな悪影響を及ぼす病気です。腎臓には老廃物を尿として排出したり、ホルモンを分泌して血液(赤血球)を作成したりする機能があります。
腎不全になると、これらの機能が阻害されてしまい、元気消失や食欲不振などさまざまな症状が現れます。症状が悪化した場合、命に関わることもあるため、早期の発見と治療が重要です。
腎不全の種類
腎不全には、大きく分けて以下の2種類があります。
<腎不全の種類>
- 急性腎不全(急性腎障害)
- 慢性腎不全(慢性腎臓病)
急性腎不全は、短期間で急激に腎臓の機能が低下する状態のことをいいます。出血や感染症、中毒などさまざまな原因で起こり、数日で命を落としてしまうケースも少なくありません。
慢性腎不全は、腎臓に慢性的な病変が生じることにより、徐々に腎臓の機能が低下していく状態のことです。数ヶ月から数年にわたって進行し、最終的には末期腎不全や尿毒症に移行していきます。
犬の腎不全の原因
犬の腎不全は、さまざまな原因によって引き起こされます。ここでは、急性腎不全と慢性腎不全に分けて、それぞれの原因について解説します。
急性腎不全の原因
急性腎不全の原因は、腎前性・腎性・腎後性の3つに大別されます。
<急性腎不全の原因>
- 腎前性…腎臓への血流の低下による発症
- 腎性…腎臓自体の障害による発症
- 腎後性…尿路の閉塞による発症
腎前性腎不全は、腎臓への血流が低下することで引き起こされます。血流が低下する主な原因として、外傷による出血や全身麻酔、心臓病による心拍出量の減少などが挙げられます。
腎性腎不全は、腎臓そのものの障害によって起こる病気です。このケースでは、腎毒性のある食べ物や薬剤、細菌感染や免疫疾患などが原因として考えられます。
腎後性腎不全は、尿路が閉塞し、尿の排泄ができなくなることで起こります。原因としては結石による尿路閉塞が多く、特に雄犬は注意が必要です。
慢性腎不全の原因
慢性腎不全は、慢性的な腎臓の障害が原因で引き起こされます。主な原因は以下のとおりです。
<慢性腎不全の原因>
- 外傷や薬物などによる中毒
- 細菌感染や免疫疾患などによる腎炎
- 心臓病やショックなどによる腎臓への血流の低下
- 結石などによる尿路の閉塞
また、加齢に伴う腎臓へのダメージや先天性疾患(生まれつき体や臓器の機能に異常がある疾患)も、慢性腎不全の原因となります。
犬の腎不全の症状
わんちゃんが腎不全にかかると、以下のような症状が見られるようになります。
<犬の腎不全の症状>
- 元気消失
- 食欲不振
- 消化器症状(嘔吐や下痢など)
- 多飲多尿
- 乏尿・無尿
- ひどい口臭
腎不全の初期症状としては、元気消失や食欲不振、嘔吐や下痢がよく見られます。そのほか、水をたくさん飲むようになり、尿量が増えている場合も腎不全が疑われます。
前述のとおり、腎不全は命に関わる危険性があり、早期の発見と治療が重要です。もし上記のような症状が見られた場合は、獣医師に一度相談してみることをおすすめします。
腎不全のステージについて
わんちゃんの腎不全(慢性腎不全)は、腎機能障害の程度によって4つのステージに分類されています。
腎不全の分類 | 概要 |
ステージ1 | ・症状がほとんど見られず、血液検査でも異常が見られない ・尿検査で尿比重の低下や蛋白尿、腎臓の形状の異常が認められることがある |
ステージ2 | ・多飲多尿が起きるようになる ・ほかの症状が認められず、異常に気づかないこともある ・腎機能が正常の4分の1にまで低下している |
ステージ3 | ・有害物質を尿中に十分排泄することができなくなり、尿毒症を発症し始める ・食欲の低下や嘔吐・下痢などの症状が現れるようになる |
ステージ4 | ・重篤な臨床症状が見られるようになる ・尿毒症がさらに進行し、積極的な治療なしでは生命維持が困難になる |
ステージの分類は、血液検査によるCRE(クレアチニン)やSDMAの値、尿の状態や血圧の数値などを参考に行われます。一度の検査だけではなく、定期的に検査を行って病状を正確に把握することが大切です。
犬の腎不全の治療法
腎不全の治療法は、わんちゃんの健康状態や根本的な問題によって異なります。以下に、代表的な治療法をまとめましたので、いざというときのために覚えておきましょう。
治療法 | 概要 |
点滴 | 積極的な水分補給により、脱水の補正や腎臓の血流量の確保を行う |
造血剤の投与 | 慢性腎不全による貧血が見られる場合、造血剤を投与して改善を図る |
消化器症状への対応 | 嘔吐や下痢などの消化器症状が見られる場合、吐き気止めや下痢止めを投与して改善を図る |
利尿剤の投与 | 尿量が少ない場合やほとんど出ない場合は、利尿剤を投与して改善を図る |
透析 | 腹膜透析や血液透析などを行い、老廃物の排出を促す |
急性腎不全の場合、迅速に適切な治療を行えば、腎機能が回復する可能性があります。一方で、完全に機能が回復せず慢性腎不全に移行することもあるため、わんちゃんが元気になった後も経過を追うことが重要です。
また、慢性腎不全によってすでに破壊されてしまった腎臓の組織は、残念ながら治療をしても回復しません。そのため、体調を維持することや病気の進行を遅らせることが治療の主体となります。
犬の腎不全において飼い主さまが注意すべきこと
腎不全は、腎臓がダメージを受けることで起こります。わんちゃんの腎臓にかかる負担を減らすためには、「良質なフードを与える」「ワクチン接種で感染症を予防する」「サプリメントや処方食で腎臓の健康をサポートする」といった配慮が必要です。
また、腎不全のサインに気づかず、発見が遅れてしまう飼い主さまも少なくありません。そのため、日頃から愛犬の様子をよく観察し、元気や食欲がない日が続く場合にはすぐに動物病院を受診するようにしましょう。
毎日のように水分摂取量や尿量をチェックしたり、定期的に健康診断を受けたりすることも、腎不全の早期発見につながるのでおすすめです。
まとめ
今回は、犬の腎不全について解説しました。急性腎不全は発症してから数日で命を落とすこともあり、慢性腎不全は一度発症すると腎機能を元に戻すことができない病気です。
また、腎不全は犬種に関係なく、どのようなわんちゃんも引き起こす可能性があります。なかなか予防が難しい病気ではありますが、飼い主さまの細やかな観察や定期的な健康診断で、早期発見・早期治療に結び付けられるようにしましょう。
「富士見台どうぶつ病院」では、ご家庭で飼われているペット動物たちの一般診療をはじめ、健康診断や予防接種などを行っています。愛犬の腎不全が疑われる方や健康管理のサポートを必要としている方は、当院までお気軽にご相談くださいませ。