猫伝染性腹膜炎(FIP)は完治する?病気の特徴や原因、治療法を解説
猫伝染性腹膜炎(FIP)という病気を知り、不安な気持ちになっている飼い主さまもいらっしゃるのではないでしょうか。FIPは治療しなければ死に至る病ですが、早期に発見して適切な治療を行えば完治する可能性があります。
今回は、FIPがどのような病気なのかを紹介し、原因や症状についても詳しく解説します。一般的な治療法やおすすめの予防もあわせて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
猫伝染性腹膜炎(FIP)とは
猫伝染性腹膜炎とは、猫コロナウイルスの突然変異によって起こる病気です。この病気は1歳未満の子猫に発症しやすく、また進行が非常に早いという特徴があります。
無治療の場合、ほぼ100%死に至り、生存期間は約9日間と短いです。FIPはとても怖い病気ではありますが、早期の発見と治療によって完治する可能性があります。
猫伝染性腹膜炎の原因
猫伝染性腹膜炎は、猫コロナウイルスが突然変異し、病原性を持つことで起こると考えられています。猫コロナウイルス自体は、飼い猫・野良猫問わず、多くの猫が保有しているウイルスです。
病原性は低く、重篤な症状を引き起こすことはありませんが、猫ちゃんに感染している間に「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」に突然変異することがあります。このウイルスは病原性が高く、体の免疫が上手く対応できないと、FIPを発症すると考えられています。
なお、猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異するメカニズムについてはまだ明らかになっていません。そのため、FIPの発症を防ぐには、猫コロナウイルスに感染させない対策が求められます。
猫伝染性腹膜炎の症状
猫伝染性腹膜炎には「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」の2種類があります。ウェットタイプの場合、お腹に水が溜まり、腹部が膨らんでぶよぶよした状態になるのが特徴です。
もうひとつのドライタイプでは、腎臓や肝臓などにしこりができ、そのしこりの場所によって現れる症状が異なります。それぞれのタイプでよく見られる症状は、以下のとおりです。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の種類 | 症状 |
ウェットタイプ | ・腹水や胸水が溜まる ・皮膚や目が黄色くなる(黄疸) ・熱が出る ・気分が沈みふさぎ込む ・食欲がなくなる ・貧血を起こす ・嘔吐や下痢をする |
ドライタイプ | ・熱が出る ・気分が沈みふさぎ込む ・貧血を起こす ・内臓の肉芽腫性炎症による症状が出る(腎障害、肝障害、消化器症状など) |
タイプによって現れる症状は異なりますが、発熱や沈鬱(元気がない状態)・貧血・食欲不振は共通して見られます。そのほか、体重が落ちていくのも特徴です。
ご覧のように、FIPの症状はさまざまで、これらの症状からFIPだと判断するのは非常に難しいといえます。もし愛猫の元気がなくなり、「お腹が膨らんできた」「呼吸が苦しそう」「歩き方がおかしい」などの異変が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
猫伝染性腹膜炎の診断方法
猫伝染性腹膜炎は、心臓病などほかの病気の症状と似ているため、各種検査を行って正確に見極める必要があります。ウェットタイプの場合は、お腹や胸に溜まっている水(腹水や胸水)の性状を調べたり、細胞検査やPCR検査を行ったりして診断します。
ドライタイプの場合は、臓器にできたしこりや血液を採取し、PCR検査によって猫伝染性腹膜炎ウイルスの存在を確認します。しかし、ドライタイプについては診断が非常に難しいこともあり、生前の確定診断がつけられないケースも少なくありません。その場合には、治療薬を試験的に投薬し、反応を見て診断することもあります。
猫伝染性腹膜炎の治療法
猫伝染性腹膜炎の治療は「投薬」が基本です。一般的には、以下のような流れで治療を進めていきます。
<猫伝染性腹膜炎の治療法>
- 病院での検査(血液検査など)
- 治療方針の決定
- 84日間の投薬&週1回の経過観察
- 再発の症状がなければ月1回の定期検診
- 体調に問題がなければ治療終了
まずは猫ちゃんがFIPなのか判断するために各種検査を実施します。 FIPと診断された場合は、早急に治療方針を決定し、飼い主さまの同意を得られたら治療を進めていきます。
投薬方法にはフェリスビルなどの「飲み薬」と「注射」の2種類がありますが、飼い主さまが自宅で実施することになるため、主流は飲み薬です。再発リスクを抑えるため、これまでの治療データから投薬期間は84日間が一般的となっています。
猫伝染性腹膜炎は完治する?
最近まで、猫伝染性腹膜炎は「不治の病」とされていました。しかし、新しい抗ウイルス薬が登場したことにより、近年では完治が望める病気となっています。
FIPは進行スピードが速く恐ろしい病気ではありますが、早期に治療を行えば、かなりの確率で完治が望めます。早期発見・早期治療につなげるためには、日頃から愛猫の様子をよく観察したり、定期的に動物病院を受診したりすることが大切です。
猫伝染性腹膜炎の予防法
ウイルスが原因である猫伝染性腹膜炎は、完全に予防することが難しい病気です。しかし、以下の予防法を行えば、発症リスクを低減することが期待できます。
<猫伝染性腹膜炎の予防法>
- 外飼いや多頭飼いをしない
- ストレスが少ない環境を整える
- 定期的に健康診断を受ける
以下では、それぞれの予防法について詳しく解説します。
外飼いや多頭飼いをしない
猫伝染性腹膜炎は、病原性が高い「猫伝染性腹膜炎ウイルス」が感染することで発症します。そのため、ほかの猫ちゃんとの接触をできるだけ避け、ウイルスの感染経路を断つのが効果的です。
外を自由に歩き回らせてしまうと、知らないうちにほかの猫ちゃんからウイルスを移されてしまう可能性があります。加えて、一匹でも陽性猫がいる場合、同居猫は高確率で感染します。これらのリスクを踏まえると、FIP予防の観点からは外飼いや多頭飼いはおすすめできません。
ストレスが少ない環境を整える
過剰なストレスは、猫ちゃんの免疫力を下げる原因となります。猫伝染性腹膜炎は、ストレスが原因で発症しやすくなるといわれているため、愛猫がストレスを感じにくい環境を整えてあげましょう。
以下の点に注意すれば、猫ちゃんがより快適に過ごすことができますので、ぜひ参考にしてみてください。
項目 | 具体例 |
生活環境 | ・テリトリーを確保する ・爪とぎグッズを用意する ・適切な室温を保つ ・大きな音を出さないように配慮する ・匂いが強いものを置かない ・こまめにトイレを掃除する |
食事 | ・好みや年齢に応じたフードを与える ・常に新鮮な水を与える ・こまめに食器を洗う |
触れ合い | ・短い時間でも遊んであげる ・長い時間留守番をさせない ・定期的にブラッシングなどのケアを行う |
定期的に健康診断を受ける
定期的に健康診断を受けるようにすれば、もし猫ちゃんがウイルスに感染した場合にも、早期に発見できる可能性が高まります。猫伝染性腹膜炎はもちろん、ほかの病気の予防にもつながるため、定期的に健康診断を受けるのは非常におすすめです。
前述のとおり、FIPは治療しなかった場合、ほぼ100%死に至ります。さらに発症してからの生存期間が短いため、早期発見につなげることが重要です。
まとめ
今回は、猫伝染性腹膜炎について解説しました。FIPは、特に若い猫に多く見られる病気であり、治療しなければほぼ100%死に至ります。
最近まで、不治の病とされていたFIPですが、特効薬が登場したことで完治が望める病気となりました。早期の発見と治療が愛猫の健康を守る鍵になりますので、定期的な健康診断と早めの受診を心がけるようにしてください。
「富士見台どうぶつ病院」では、FIP治療をご検討されている方を対象にオンライン相談を行っています。当院で処方するお薬は、通常70日間で寛解に至れる錠剤タイプのお薬で、自宅での寛解を目指すことが可能です。FIPは早期発見が重要ですので、愛猫の体調について気になることがありましたら、当院までご相談ください。