猫の分離不安症とは?原因や症状、効果的な対策をご紹介
犬によく見られる病気のひとつに「分離不安症」がありますが、近年では猫が罹患するケースが増えています。命に関わることは少ないものの、放置しておけば重大な問題を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
今回は、猫の分離不安症の原因や症状、一般的な治療法について解説します。愛猫を分離不安症にしないための対策も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
猫の分離不安症とは
分離不安症とは、猫が愛着を感じている方と離れたときに起こる不安障害のひとつです。猫ちゃんは、飼い主さまやご家族など特定の方がそばにいないことに対して強い不安を感じると、問題行動や体調不良を起こすことがあります。これが分離不安症です。
本来、猫ちゃんは自立心が強く、孤独や留守番に強いといわれていました。しかし、近年では分離不安症を発症する猫ちゃんが増えており、室内飼いやリモートワークの増加など飼育環境の変化がその背景にあると考えられています。
猫の分離不安症の原因
猫ちゃんが分離不安症を引き起こした場合、以下のような原因が考えられます。
<猫の分離不安症の原因>
- ライフスタイルの変化(留守時間の延長など)
- 生活環境の変化(引っ越しやホテルなど)
- 留守番をしていたときの恐怖体験(雷や地震など)
- 加齢や病気に伴う不安
猫はデリケートな生き物であり、環境の変化に敏感な動物です。そのため、いつも一緒にいた同居人がいなくなったり、引っ越しなどで環境が変わったりすることで強い不安を感じる猫ちゃんは少なくありません。
また、留守番中に大きな音が鳴って驚いたなどトラウマになるほどの恐怖体験をした場合、その恐怖心が分離不安症の引き金になることもあります。このように、分離不安症の原因は猫ちゃんによってさまざまです。
分離不安症になりやすい猫の特徴
分離不安症は、若い猫に好発する傾向があります。具体的には、1歳までに経験した出来事や環境が原因となり、5歳頃までに症状が現れることが多いです。そのほか、避妊した猫よりも去勢した猫、つまり雄猫のほうが多いという報告もあります。
また、以下の内容に当てはまる猫ちゃんは、分離不安症になりやすいといわれています。
<分離不安症になりやすい猫の特徴・環境>
- 臆病で甘えん坊な性格をしている
- 早期に離乳させられた
- 同居人が飼い主さま一人だけしかいない
- 引っ越しなどで生活環境が大きく変わった
分離不安症の発症リスクは、猫ちゃんの性格や環境の変化によって変わります。特に飼い主さまへの依存心が強い猫ちゃんは、発症率が高いので注意が必要です。
猫の分離不安症の症状
猫が分離不安症を発症すると、さまざまな問題行動や体調不良が見られるようになります。分離不安によって引き起こされる主な症状は以下のとおりです。
<猫の分離不安症の症状>
- 大声で吠え続ける・鳴き続ける
- 家具や物を壊す
- トイレ以外の場所で排泄する
- 過剰な毛づくろい(グルーミング)をする
- 下痢や嘔吐をする
猫ちゃんが留守番をしているときに、上記のような症状が現れた場合には、分離不安症であることが疑われます。さらに留守番中以外では、「同居人が家を出るときに落ち着かなくなる」「飼い主さまの帰宅を過剰に喜ぶ」「人に対して攻撃的になる」などの症状が見られることが多いです。また、過剰な毛づくろいによって、脱毛することもあります。
なお、これらの症状は分離不安症だけではなく、ほかの病気でも起こりえます。例えば、不適切な排泄は「腎不全」や「糖尿病」など尿量が増える病気でも見られる症状です。そのため、自己判断で分離不安症と決めつけず、動物病院で一度診てもらうことをおすすめします。
猫の分離不安症の治療法
猫ちゃんが分離不安症と診断された場合、行動療法や薬物療法で症状の改善を図るのが一般的です。ここでは、それぞれの治療法について解説します。
行動療法
猫ちゃんはもともと単独で行動する生き物です。そのため、きちんとトレーニングを積んで留守番に慣れさせれば、基本的には分離不安症を改善できます。
治療内容は猫ちゃんによって異なりますが、一般的な行動療法として次のようなものが挙げられます。
<猫の分離不安症に対する行動療法>
- 短時間の留守番から徐々に慣らしていく
- 飼い主さまの外出時・帰宅時の過度な愛情表現を避ける
- 遊びや食事の時間を決めて飼い主さまがいない時間を習慣づける
このような行動療法を実施することで、猫ちゃんの自立を促すことができます。分離不安症は一朝一夕で改善されるものではないため、愛猫の様子をうかがいつつ、今ある環境に徐々に慣れさせていくことが大切です。飼い主さまの頑張りも必要となりますが、根気強く続けていきましょう。
薬物療法
猫ちゃんの状態によっては、精神を安定させるために抗うつ剤やサプリメントの使用がすすめられます。しかし、分離不安症の治療は「行動療法」が基本です。薬物療法はあくまでも行動療法の補助として併用しますので、獣医師とよく相談したうえでご検討ください。
猫を分離不安症にしないための対策・解消法
最後に、猫ちゃんを分離不安症にしないための対策を紹介します。後述する4つの対策は、分離不安症が発症したときの解消法にも通ずるものです。愛猫がより安心して暮らせる環境を築くためにも、ぜひ参考にしてみてください。
①猫のテリトリーを確保する
猫は縄張り意識が強い動物です。その習性からテリトリーを確保すること、つまり愛猫が安心できる場所をつくることで、留守番中に感じる不安を緩和できます。
猫のテリトリーには、トイレやベッドが置ける大きさ(2〜3段)のケージがおすすめです。ケージは飼い主さまが一番滞在時間の長い部屋に置き、また飼い主さまの匂いがついた物をベッドの中に入れておきます。そして1日のうち数時間をケージの中で過ごさせれば、猫ちゃんは自分のテリトリーとして認識してくれるでしょう。
②決まった時間に遊んであげる
短い時間でも構いませんので、毎日決まった時間に猫ちゃんと遊んであげましょう。
猫ちゃんのタイミングに合わせると、「いつでも遊んでくれる」と思わせてしまい、飼い主さまへの依存心が強くなることがあります。その結果、自分の思い通りにならなかった場合に感情をコントロールできず、分離不安症を引き起こしてしまうかもしれません。
③外出するときにはそっと出かける
外出するときは、猫ちゃんを刺激しないようにそっと出かけましょう。分離不安症の素因がある猫ちゃんにとって、飼い主さまの出かけるアピール(行ってきますの声がけなど)は、かえって不安を煽ることになります。
猫ちゃんは飼い主さまの様子をよく観察していますので、気を紛らわすためにテレビや電気をつけっぱなしにして出かけるのもいいでしょう。そのほか、「飼い主さまが出かけると良いことある」と認識してもらうため、外出するときに好きな食べ物やおもちゃを与えるのもおすすめです。
④排泄の失敗や破壊行動が見られても叱らない
分離不安症を発症した猫は、留守番中にトイレ以外の場所で排泄したり、家具を壊したりすることがよくあります。もし帰宅時にそのような跡があっても、叱らずに淡々と片付けるようにしましょう。
その場で注意されずに後から叱られても、猫ちゃんは何を叱られているのかわかりません。より不安を煽ることになるため、症状が改善されるどころか逆効果といえます。
まとめ
猫の分離不安症は、主に飼い主さまと離れるときに強い不安を感じることで発症します。猫ちゃん自身の問題だけではなく、飼い主さまとの関係性や環境の変化に起因することも多いです。
愛猫の分離不安症が疑われる場合は、猫ちゃんとの接し方や環境を見直しつつ、留守番トレーニングを中心とした治療を行いましょう。前述のとおり、分離不安症に似た症状が現れる病気もありますので、まずは獣医師に相談することをおすすめします。
「富士見台どうぶつ病院」では、ペット動物たちの健康と楽しい毎日をサポートするため、一般診療や健康診断を行っています。分離不安症に関するご相談も受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。