犬がおしりを床にこすりつける|肛門腺しぼりは必要?やり方と受診の目安

「うちの子、最近おしりを床にズリズリこすりつけてる…」「しきりにおしりを気にして舐めているけど、大丈夫?」――そんな様子に戸惑ったことはありませんか?
犬がおしりを床にこすりつけるしぐさ(スクーティング)は、見た目はちょっとユニークですが、実は肛門腺(こうもんせん)が溜まって不快を感じているサインであることがとても多い動きです。放っておくと、肛門嚢炎(のうえん)や破裂といった痛みの強いトラブルにつながることもあります。
この記事は 窪木 未津子(院長・獣医師) が監修しています。気になる症状がある場合は自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談してください。本記事では、肛門腺の役割と溜まる理由、こすりつける以外のサイン、自宅でのしぼり方と注意点、受診の目安までを、やさしく整理していきます。
✅ この記事のポイント
- おしりを床にこすりつけるのは肛門腺が溜まっているサインの代表例です
- 小型犬・シニア・肥満の子は肛門腺が溜まりやすい傾向があります
- 自宅でのしぼりは無理せず、不安があれば動物病院やトリミングでの処置がおすすめです
- 肛門嚢炎・破裂は痛みが強く、おしりに血や膿が出たらすぐ受診が必要です
- 当院ではトリミング時はもちろん、肛門腺しぼり単独でも対応しています
Contents
犬がおしりを床にこすりつけるのはなぜ?
結論からお伝えすると、おしりを床にこすりつける行動の多くは、肛門腺に分泌物が溜まり、違和感やかゆみを感じているサインです。おしり側に原因があることが多く、「お尻がムズムズするから擦って解消したい」という自己流のケアのような動きともいえます。
スクーティング=おしりを引きずる動き
前足だけで進みながら、お尻を床にぺたっとつけて擦る動きのことをスクーティングと呼びます。カーペットやフローリングの上で、座ったままズリズリと進む姿が特徴的です。
一度や二度なら「たまたまお尻がかゆかっただけ」のこともありますが、何度も繰り返す・毎日のように見られる場合は、肛門腺のトラブルや皮膚・寄生虫の問題が隠れているかもしれません。
肛門腺以外に考えられる原因
スクーティングの原因は肛門腺だけとは限りません。肛門まわりの皮膚炎、便の付着、寄生虫(条虫など)、しっぽや腰まわりの違和感など、さまざまな要因があります。
ただ、頻度としていちばん多いのは肛門腺のトラブル。まずは「肛門腺が溜まっているサインかも」と考えておき、繰り返すようなら動物病院でチェックしてもらうのが安心です。
肛門腺とは?なぜ分泌物が溜まるの?
肛門腺は、犬のおしりの左右(時計で言うと4時と8時の位置)にある一対の小さな袋で、ここに独特のにおいがする分泌物がたまります。本来は便と一緒に少しずつ排出される仕組みなのですが、うまく出せずに溜まってしまう子が少なくありません。
肛門腺の役割
肛門腺の分泌物は、犬にとっての「個性のにおい」のような役割をもっています。犬同士がお尻のにおいをかぎ合うのは、この分泌物でお互いを確認し合っているから。本来はマーキングや自己紹介のための大切な分泌物なのです。
なぜ溜まる?分泌物がうまく出せない理由
健康な犬は、排便時のいきみで肛門腺が自然に押し出されます。ところが、以下のような要因があると分泌物が溜まりやすくなります。
- 便がやわらかく、いきみの力が肛門腺にかかりにくい
- 肛門腺の出口が狭い・つまりやすい体質
- 分泌物がドロッとして粘度が高い
- 運動不足で筋力が弱く、しっかりいきめない
溜まりやすい犬の傾向
一般的に、小型犬・シニア犬・肥満の子・運動量が少ない子は肛門腺が溜まりやすい傾向があるといわれています。チワワやトイプードル、ミニチュア・ダックスフンドなど、小型犬種の飼い主さんから「よくお尻を気にする」というご相談を受けることが多いです。
ただし、大型犬でも体質によっては溜まりやすい子がいます。「うちは大きいから大丈夫」と決めつけず、気になる動きがあればチェックしてあげてください。

こすりつける以外の「肛門腺が溜まっているサイン」
肛門腺のトラブルは、床にこすりつける動き以外にもいくつかの形で現れます。複数のサインが重なっているときは、肛門腺のケアが必要なタイミングかもしれません。
しきりにおしりを舐める・噛む
不快感をなんとかしようとして、自分でおしりやしっぽの付け根を執拗に舐めたり噛んだりすることがあります。舐めすぎで毛が抜けたり、皮膚が赤くなっているときは、肛門腺の違和感がかなり強くなっているサインかもしれません。
おしりから独特の強いにおいがする
肛門腺の分泌物は、もともと魚の生ぐささにも似た独特の強いにおいがあります。少量なら気になりませんが、分泌物が漏れ出していたり、炎症を起こしていたりすると、抱っこしたときにツンとくるようなにおいを感じることがあります。
座り方・歩き方がおかしい
お尻に不快感があるため、座るときに片側のお尻を浮かせる、落ち着いて座っていられない、歩き方がぎこちないといった変化が出ることもあります。「なんとなく座り方が違うな」と感じたら、おしりまわりをそっと観察してみてください。
サインまとめ
| サイン | 考えられること |
|---|---|
| 床におしりをこすりつける | 肛門腺の違和感・かゆみ |
| おしりをしきりに舐める | 分泌物の溜まり・皮膚トラブル |
| 強い魚臭いにおい | 分泌物の漏れ・炎症 |
| 座り方・歩き方が不自然 | 痛み・違和感が強い可能性 |
| おしりが赤く腫れている | 肛門嚢炎・膿瘍のおそれ |
肛門腺しぼりは絶対に必要?頻度の目安
「犬には必ず肛門腺しぼりが必要なの?」とよく聞かれますが、答えは「すべての犬に必要なわけではない」です。排便時に自分でしっかり出せている子なら、特別なケアをしなくても問題ありません。
自力で出せる子はケア不要なことも
うんちの表面に、茶色〜黄土色のドロッとした分泌物が時々ついている子は、排便と一緒に自然に肛門腺が排出できているサインです。この場合、無理に人の手でしぼる必要はありません。
一般的な頻度の目安は「月1回」程度
自力で出しにくい子の場合、月に1回程度のペースで肛門腺しぼりをしてあげるのが一般的な目安です。トリミングの際に合わせて行うことが多く、トリマーさんや動物病院で定期的にチェックしてもらうと安心です。
ただし、個体差が大きいので「2〜3週間で溜まる子」もいれば「2〜3か月に1回でちょうどよい子」もいます。お尻を気にするしぐさが出てきたタイミングを目安にすると、その子に合ったペースが見えてきます。
やりすぎもよくない
肛門腺しぼりは、頻繁にやりすぎると肛門腺のまわりの組織を刺激し、炎症の原因になることもあります。「念のため週に1回」などの過剰なケアはおすすめできません。必要なタイミングで、必要なだけ行うのが基本です。
💡 ワンポイント
「うちの子に肛門腺ケアが必要かわからない」というときは、まず一度動物病院でチェックしてもらうのがおすすめです。溜まり具合や分泌物の性状を確認したうえで、その子に合った頻度を提案してもらえます。
自宅での肛門腺しぼりのやり方と、無理をしない方がいい理由
自宅でのしぼりは、慣れた飼い主さんなら月1回程度のケアとして行うことも可能です。ただし、やり方を間違えると肛門嚢炎や破裂のリスクがあるため、不安がある場合は無理をせず動物病院やトリミングでお願いするのが安全です。
基本的な手順
一般的な外側からのしぼり方は、次のような流れです。あくまで参考として読んでいただき、初めての方は必ず一度プロに見てもらってから挑戦してください。
- お風呂場など、汚れてもよい場所で行う(分泌物が飛ぶため)
- ティッシュやガーゼを用意し、しっぽを上に持ち上げる
- 肛門を時計に見立てて、4時と8時の位置に親指と人差し指を軽く当てる
- 下から上(肛門に向かって)に、やさしく押し上げるように絞る
- 分泌物が出たらティッシュで受け止め、シャワーで洗い流す
無理にやらないほうがいい理由
自己流で強くしぼりすぎると、肛門腺のまわりの組織を傷つけ、炎症(肛門嚢炎)や破裂を引き起こすことがあります。また、肛門腺の位置や分泌物の硬さには個体差があり、外側からでは出しにくい子もいます。その場合、無理に押すとかえって嫌がり、以後のケアが難しくなることも。
特に、分泌物が固まっている・ドロドロで出にくい・犬がとても嫌がるといったケースでは、自宅での処理は避け、動物病院でしぼってもらうことをおすすめします。病院では必要に応じて内側からも処置ができ、より安全・確実にケアできます。
シャンプーやトリミングと合わせるのが便利
肛門腺しぼりは、シャンプーやトリミングのタイミングに合わせて行うと、分泌物のにおいや汚れも一緒に洗い流せて効率的です。シャンプーの頻度や方法については犬のシャンプーはどれくらいの頻度がいい?皮膚を守る洗い方と乾かし方もあわせて参考にしてみてください。

肛門嚢炎・破裂は要注意!受診の目安
肛門腺のケアを怠ったり、体質的にうまく出せない状態が続いたりすると、分泌物がたまりすぎて細菌が繁殖し、肛門嚢炎を起こすことがあります。悪化すると袋が破裂し、おしりに穴が開いてしまうことも。ここは早めの対処がとても大切です。
肛門嚢炎のサイン
肛門腺の袋の中で炎症が起きている状態です。おしりを強く気にして舐める・床にこすりつける頻度が急に増えた・肛門まわりが赤く腫れている・触ると痛がるといった様子が見られたら、肛門嚢炎を疑って早めに受診しましょう。
破裂したときの見た目
炎症がさらに進むと、肛門の横の皮膚が破れて穴が開き、血や膿が出てくることがあります。おしりの左右(4時・8時の位置)の皮膚にポツンと穴が空いた・血がにじんでいる・寝ていた場所に赤い液体がついているといった場合は、破裂している可能性が高い状態です。
破裂した場合、犬は強い痛みを感じています。放置せず、できるだけ早く動物病院を受診してください。治療には洗浄や抗菌薬の投与などが必要になります。
⚠️ こんなときは要注意
おしりが赤く腫れている・肛門の横に穴や傷がある・血や膿が出ている・触ると強く痛がる・元気や食欲が落ちているといった様子があるときは、肛門嚢炎や破裂の可能性があります。様子見をせず、できるだけ早く動物病院を受診してください。
繰り返す子は原因の見直しを
何度も肛門嚢炎を繰り返す子は、便の状態・体質・肥満・アレルギーなど、背景にある原因を見直すことも大切です。食事の内容や体重管理によって肛門腺の溜まり方が変わる子もいますので、かかりつけの獣医師に相談してみてください。健康状態を総合的にチェックするには、犬の健康診断の機会に合わせて相談してみるのもおすすめです。
猫にも肛門腺はある?富士見台どうぶつ病院の対応
最後に、猫の肛門腺について、そして当院での対応をお伝えしておきます。
猫にも肛門腺はある
実は、猫にも犬と同じように肛門腺があります。ただし、猫の場合は犬ほど溜まりやすくなく、症状が目立たないことが多いといわれています。それでも、シニア猫や肥満の猫では溜まることがあり、おしりを気にする・床にこすりつけるといったしぐさが見られたら、一度チェックしてもらうと安心です。
当院でのケア:トリミングでも、単独処置でもOK
富士見台どうぶつ病院では、トリミングの際に肛門腺しぼりを合わせて行っています。また、「シャンプーはいらないけれど、肛門腺だけ気になる」という場合も、肛門腺しぼり単独でのご相談も可能です。
「自宅でしぼってみたけれどうまくできない」「お尻を気にする頻度が増えた」など、小さなお悩みでもお気軽にご相談ください。獣医師・動物看護師・トリマーが連携して、その子に合ったケアをご提案します。
まとめ
犬がおしりを床にこすりつけるのは、肛門腺が溜まっているサインの代表例です。しきりに舐める・独特の強いにおいがする・座り方がおかしいといった様子もあわせてチェックしてみてください。
肛門腺しぼりは、すべての犬に必要なわけではありませんが、小型犬・シニア・肥満の子は溜まりやすい傾向があります。自分で出せない子は月1回程度を目安に、トリミングや動物病院のタイミングでケアしてあげるのが安心です。
自宅でのしぼりは、強くやりすぎると肛門嚢炎や破裂を引き起こすことがあるため、不安があるときは無理をせず、プロにお願いするのがいちばんです。おしりに赤み・腫れ・穴・血や膿が見られる場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。
「お尻を気にしているけど、どのくらいなら様子見でいい?」と迷ったら、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 肛門腺しぼりはどのくらいの頻度で必要ですか?
A. 一般的には月1回程度が目安ですが、自分でしっかり出せている子は特別なケアは不要です。溜まりやすさには個体差があるため、お尻を気にするしぐさが見られたタイミングで行うのがおすすめです。
Q. おしりをこすりつけるのは必ず肛門腺が原因ですか?
A. 最も多いのは肛門腺の違和感ですが、皮膚炎・便の付着・寄生虫・腰まわりの痛みなどが原因のこともあります。頻繁に繰り返すときは動物病院で原因を調べてもらいましょう。
Q. 自宅でしぼるのが難しいのですが大丈夫でしょうか?
A. 無理に行う必要はありません。強く押しすぎると炎症や破裂の原因になることもあるため、不安があればトリミングや動物病院でのケアをおすすめします。シャンプーのタイミングで依頼すると便利です。
Q. 肛門腺が破裂したらどうすればいいですか?
A. おしりの横の皮膚に穴が開き、血や膿が出ている場合は破裂している可能性が高いです。強い痛みを伴うため、様子見をせずできるだけ早く動物病院を受診してください。洗浄や抗菌薬の治療が必要になります。
Q. トリミングは受けないのですが、肛門腺しぼりだけお願いできますか?
A. はい、富士見台どうぶつ病院では肛門腺しぼり単独でのご相談も可能です。「お尻を気にしているけれど自宅ではうまくできない」といった場合も、お気軽にお問い合わせください。
監修:窪木 未津子(院長・獣医師)/麻布大学獣医学部卒業、ヤマザキ動物専門学校卒業。群馬県出身。埼玉県・東京都の動物病院での勤務を経て、富士見台どうぶつ病院 院長。獣医師・動物看護師の資格に加え、トリミングやドッグトレーニングの知識・技術をもち、暮らしのちょっとした悩みから病気・ケガの相談まで幅広く対応しています。
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アイキャッチ画像: Photo by Samson Katt on Pexels


