認知症
2026年10月14日

猫も認知症になるの?夜鳴き・徘徊が増えたときに考えたいこと

窓辺で休む高齢の猫

「最近、夜中に大きな声で鳴くようになった…」「家の中をウロウロ歩き回って落ち着かない」「呼んでも反応が鈍くなってきた気がする」――高齢の猫と暮らしていると、こんな変化に気づいて不安になることはありませんか?

「もしかして認知症?」と心配になる飼い主さんは少なくありません。確かに猫も、年齢を重ねると人の認知症に似た認知機能不全症候群(CDS)と呼ばれる状態になることがあります。ただし、夜鳴きや徘徊といった症状は、認知症以外の病気でも起こることが知られています。「年のせい」「ボケてきただけ」と決めつけてしまうのは、少し危険かもしれません。

この記事は 窪木 未津子(院長・獣医師) が監修しています。気になる症状がある場合は自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談してください。本記事では、猫の認知症に見られる変化、よく似た症状を起こす病気との見分け方、そして家庭でできる環境調整のポイントまでをやさしく整理していきます。

✅ この記事のポイント

  • 猫も高齢になると認知機能不全(認知症)になることがあります
  • 夜鳴き・徘徊・トイレの失敗・呼んでも反応しないなどが代表的なサインです
  • ただし甲状腺機能亢進症・高血圧・痛み・視力低下でも同じような症状が出ます
  • 「認知症と決めつけず」まずは動物病院で他の病気との鑑別が大切です
  • シニア期は年2回の健康診断で早めの変化に気づけます

Contents

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猫も認知症になるの?高齢猫に増える「認知機能不全」とは

結論からお伝えすると、猫も高齢になると認知機能が低下する「認知機能不全症候群」になることがあります。かつては犬ほど注目されていませんでしたが、猫も長生きになったことで、シニア期以降に見られる行動の変化が知られるようになってきました。

認知機能不全症候群(CDS)とは

認知機能不全症候群(Cognitive Dysfunction Syndrome/CDS)は、加齢に伴って脳の働きが少しずつ低下していく状態のこと。人間の認知症に似た症状が現れ、記憶・学習・感覚・社会性などに影響が出ます。

猫の場合、11歳を過ぎたあたりから少しずつ増え始めると言われており、15歳以上の猫では珍しくない変化です。ただし、進行のスピードや現れ方には個体差が大きく、すべてのシニア猫に起こるわけではありません。

「年のせい」で片付けないことが大切

高齢になるとどうしても「もう年だから仕方ない」と思ってしまいがちですが、認知症に似た変化の背景には、治療で改善できる病気が隠れていることも少なくありません。認知症と決めつける前に、まずは一度動物病院で全身をチェックしてもらうことが大切です。

猫の年齢と「シニア期」の目安

猫は一般的に、7歳ごろから中高齢期、11歳以降がシニア期にあたると言われます。見た目は元気でも、体の中では少しずつ変化が始まっている時期です。この時期から、普段の様子を意識して観察しておくと、ちょっとした変化にも気づきやすくなります。

夜のリビングで過ごす高齢猫
Photo by Camilo Ospina on Pexels

こんな変化はありませんか?猫の認知症に見られるサイン

猫の認知機能不全では、行動や性格に少しずつ変化が現れます。1つだけでなく、複数のサインが重なって、だんだん強くなっていくのが特徴です。

夜鳴き(夜間の大きな声)

いちばん多い相談のひとつが、夜中に突然大きな声で鳴き出す「夜鳴き」です。何もない方向に向かって、低く響く声で鳴き続けることもあり、飼い主さんの睡眠にも影響しがち。昼夜のリズムが乱れたり、不安を感じやすくなったりすることが背景にあると考えられています。

徘徊・同じ場所をぐるぐる歩く

家の中を目的もなくウロウロ歩き回る、同じ場所を何度も往復する、部屋の隅や家具のすき間で立ち止まったまま動けなくなる――こうした徘徊も代表的なサインです。「どこへ行きたかったのか忘れてしまった」ような様子に見えることもあります。

トイレの失敗が増える

これまでちゃんとトイレでできていた子が、トイレの場所を忘れてしまったように違う場所で粗相をするようになることがあります。トイレの手前まで来てから別の場所でしてしまう、トイレの縁に乗ったままお尻がはみ出ているといったケースも。

呼んでも反応しない・ぼんやりしている

名前を呼んでも振り向かない、目の焦点が合っていないように見える、宙を見つめてじっとしているといった変化もよく見られます。耳が遠くなっている可能性もありますが、反応の鈍さが日に日に強くなる場合は、認知機能の低下も疑われます。

急に甘えん坊になる/逆に攻撃的になる

性格の変化もサインのひとつです。これまで一人の時間が好きだった子が急に飼い主さんにべったり甘えるようになる、逆に、おだやかだった子が触られるのを嫌がって怒るようになる――こうした変化も、脳の変化や不安感の高まりと関係していることがあります。

💡 ワンポイント

「いつから」「どんなときに」「どのくらいの頻度で」変化が起きているかをメモや動画に残しておくと、受診時にとても役立ちます。夜鳴きや徘徊は、短い動画が1本あるだけで獣医師が状況をイメージしやすくなります。

夜鳴き=認知症とは限らない。見逃したくない他の病気

ここがとても大切なポイントです。夜鳴き・徘徊・性格の変化は、認知症に特徴的な症状として知られていますが、同じような症状が、別の病気でも起こります。「年だから」「ボケたのかな」と決めつけてしまうと、治療できる病気を見逃してしまうことがあります。

甲状腺機能亢進症

シニア猫に多い病気の代表格です。甲状腺ホルモンが過剰に出ることで、活動的になりすぎる・落ち着かない・夜中に鳴く・よく食べるのに痩せるといった症状が現れます。認知症と間違えられやすい病気のひとつで、血液検査で診断できます。

高血圧

猫の高血圧は、腎臓病や甲状腺機能亢進症に伴って起こることが多く、頭痛のような不快感や、網膜への影響で視力に障害が出ることがあります。イライラして鳴く、ぶつかりながら歩くといった様子の裏に、高血圧が隠れていることもあります。

慢性腎臓病

シニア猫でとても多い病気です。体調不良や脱水、吐き気などから、落ち着きがなくなったり夜中に鳴いたりすることがあります。水をよく飲む・おしっこの量が増えた・痩せてきたといった変化があれば、腎臓のチェックが必要です。

痛み(関節炎など)

高齢猫の多くが、気づかれないうちに変形性関節症などの慢性的な痛みを抱えていることが知られています。痛みで夜によく眠れず鳴いてしまう、ジャンプができなくなった、トイレの縁をまたぐのがつらそう――こうした変化も、認知症ではなく痛みが原因のことがあります。

視力・聴力の低下

目や耳の機能が落ちてくると、不安から夜鳴きしたり、家の中で迷子のように歩いたりすることがあります。ぶつかりながら歩く、呼んでも反応しない、暗いところで極端に落ち着かない様子があれば、視力・聴力の変化も考えられます。

見分けるポイント一覧

気になる症状認知症以外に考えられること
夜中に大きな声で鳴く甲状腺機能亢進症・高血圧・痛み
落ち着かず歩き回る甲状腺機能亢進症・不快感・痛み
トイレを失敗する腎臓病・膀胱炎・関節炎
呼んでも反応しない聴力の低下・視力低下
性格が急に変わった痛み・内臓疾患・神経の問題

⚠️ こんなときは要注意

夜鳴き・徘徊・トイレの失敗など、いつもと違う様子が続くときは、「認知症だろう」と決めつけず、まずは動物病院で血液検査や血圧測定などの一般的な検査を受けてみてください。治療できる病気が見つかることが少なくありません。

毛布の上でくつろぐシニア猫
Photo by Rino Adamo on Pexels

動物病院ではどんなことを調べるの?

シニア猫の行動の変化について相談すると、動物病院ではまず認知症以外の病気を一つずつ除いていく流れで検査を進めるのが一般的です。「認知症」と診断するのは、他の原因が見つからなかったときにたどり着く結論、というイメージです。

問診でくわしく生活の様子を聞きます

いつから、どんなタイミングで、どんな行動が増えてきたか。食欲や水を飲む量、トイレの様子、睡眠時間など、普段の生活についてていねいに伺います。家で撮った動画やメモがあると、より正確に状況を把握できます。

血液検査・尿検査

甲状腺機能亢進症や腎臓病、糖尿病、肝臓の病気などを調べるために、血液検査と尿検査を行います。シニア期の検査では、通常の項目に加えて甲状腺ホルモン(T4)をあわせて測ることが多いです。

血圧測定

高血圧は見た目では分かりにくいため、専用の機器で血圧を測ります。シニア猫では、他の病気と並行して高血圧が隠れていることもあり、定期的なチェックが望ましい項目です。

身体検査・神経学的な評価

関節の痛み、歯や口の中のトラブル、しこりの有無、目や耳の状態なども確認します。必要に応じて画像検査(レントゲンや超音波)を加え、全身の状態を立体的に把握していきます。

家庭でできる環境調整のポイント

認知症と診断された場合も、他の病気と並行して付き合っていく場合も、生活環境を少し整えてあげるだけで、猫がぐんと暮らしやすくなることがあります。難しいことは必要ありません。できるところから少しずつ試してみてください。

段差を減らす・足元を安全に

高齢になると、以前は軽々と飛び乗っていた場所が難しくなります。低いステップやスロープを置く、ソファやベッドへの昇り降りを助けてあげるだけで、転倒や関節への負担を減らせます。フローリングには滑り止めマットを敷くのもおすすめです。

トイレの位置と数を見直す

トイレまでの距離が遠いと、間に合わずに失敗してしまうことがあります。生活スペースの近くにトイレを増やす、縁の低い出入りしやすいトイレに変えるなどの工夫で、失敗がぐっと減ることも。多頭飼育の場合は、頭数+1個が目安と言われます。

夜の照明をほんのり

暗闇の中で不安になって鳴く子には、廊下やトイレの近くに小さな常夜灯をつけてあげると落ち着くことがあります。真っ暗ではなく、ほんのり明るい程度が目安です。視力が落ちている子にも安心材料になります。

生活リズムを一定に

食事・遊び・寝る時間など、1日の流れをなるべく一定にしてあげると、昼夜のリズムが整いやすくなります。昼間に短時間でも遊んであげたり、日光の入る場所でくつろがせたりすることで、夜にぐっすり眠ってくれることも増えてきます。

静かで安心できる居場所をつくる

不安が強くなっているシニア猫には、静かで落ち着ける「隠れ家」のような場所があると安心です。使い慣れた毛布や、においのついたベッドを置いてあげましょう。無理に構いすぎず、そっと寄り添う時間を増やすのもおすすめです。

💡 ワンポイント

環境を変えるときは、一度にすべてを変えずに、少しずつ試してみてください。高齢猫は環境の変化に敏感なことが多いので、「新しいトイレを置くけど、古いトイレもしばらく残しておく」といった形で、ゆっくり移行していくのが安心です。

シニア期は年2回の健康診断を目安に

認知症を含めたシニア期の変化は、早めに気づけるほど対応の選択肢が広がります。見た目には元気そうでも、体の中では少しずつ変化が進んでいることがあるため、定期的な健康診断がとても大切です。

シニア期は半年に1回がおすすめ

若い猫では年1回の健康診断が目安ですが、7歳を過ぎたシニア期からは半年に1回(年2回)のペースが推奨されます。猫の半年は、人間の2〜3年に相当すると言われることもあり、ちょっとした変化を見逃さないためにも、定期的なチェックが安心です。

健康診断でわかること

血液検査・尿検査・血圧測定・身体検査などを組み合わせることで、腎臓病や甲状腺機能亢進症、糖尿病、高血圧など、シニア期に多い病気を早い段階で見つけられることがあります。症状が出る前に治療やケアを始められれば、進行をゆっくりにできる可能性もあります。

猫の健康診断の詳細については、猫の健康診断は必要?何歳から・どんな検査・頻度の目安をやさしく解説でもくわしくまとめています。あわせてご覧ください。

富士見台どうぶつ病院の健康診断キャンペーン

富士見台どうぶつ病院では、春と秋に健康診断キャンペーンを実施しています。シニア期の猫ちゃんの定期チェックのタイミングとしてもご利用いただけますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。

まとめ

猫も高齢になると、人の認知症に似た認知機能不全症候群(CDS)になることがあります。夜鳴き、徘徊、トイレの失敗、呼んでも反応しない、急に甘えたり攻撃的になったり――こうした変化は、代表的なサインとして知られています。

ただし、同じような症状は甲状腺機能亢進症・高血圧・慢性腎臓病・痛み・視力/聴力の低下など、治療やケアで改善できる他の病気でも起こります。「もう年だから」「ボケてきたのかな」と決めつけずに、まずは動物病院で全身をチェックすることが大切です。

家庭では、段差を減らす・トイレの位置と数を見直す・夜にほんのり明かりをつける・生活リズムを一定にするなど、ちょっとした環境調整で猫がぐっと暮らしやすくなります。そしてシニア期は、半年に1回の健康診断を目安に、小さな変化にも早めに気づける体制を整えておきましょう。

よくある質問

Q. 猫は何歳くらいから認知症になりますか?

A. 一般的に11歳を過ぎたあたりから少しずつ増え始めると言われています。ただし進行や現れ方には個体差が大きく、すべてのシニア猫に起こるわけではありません。気になる変化があれば、年齢に関わらず動物病院で相談してみてください。

Q. 夜鳴きがひどいのですが、まず何をすればいいですか?

A. まずは動物病院で、認知症以外の病気がないかをチェックしてもらうことをおすすめします。甲状腺機能亢進症や高血圧、関節の痛みなど、治療で改善できる病気が隠れていることがあります。家でできる動画やメモがあると診察時に役立ちます。

Q. 認知症と診断されたら治療法はありますか?

A. 認知症そのものを完全に治す方法は確立されていませんが、生活環境の工夫や不安を和らげる方法、場合によってはサプリメントや投薬など、進行をゆるやかにし、猫が穏やかに過ごせるようサポートする選択肢はあります。獣医師と相談しながら、その子に合った方法を見つけていきましょう。

Q. 犬にも認知症はありますか?

A. はい、犬にも加齢に伴う認知機能不全があり、猫と似たような夜鳴きや徘徊などの症状が見られます。犬種や個体によって現れ方は異なります。多頭飼育のご家庭では、犬・猫どちらにも起こりうる変化として知っておくと安心です。

Q. 健康診断はどのくらいの頻度で受ければよいですか?

A. 若い猫では年1回、7歳を過ぎたシニア期からは半年に1回(年2回)のペースが目安です。富士見台どうぶつ病院では春と秋に健康診断キャンペーンを行っていますので、タイミングの一つとしてご活用ください。

監修:窪木 未津子(院長・獣医師)/麻布大学獣医学部卒業、ヤマザキ動物専門学校卒業。群馬県出身。埼玉県・東京都の動物病院での勤務を経て、富士見台どうぶつ病院 院長。獣医師・動物看護師の資格に加え、トリミングやドッグトレーニングの知識・技術をもち、暮らしのちょっとした悩みから病気・ケガの相談まで幅広く対応しています。

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