2026年07月22日

猫にもフィラリア予防は必要?蚊が運ぶ病気と夏の対策

窓辺で外を眺める猫

「フィラリアって、犬だけの病気じゃないの?」「うちは完全室内飼いだから、蚊なんて関係ないと思っていた…」

動物病院で「猫にもフィラリア予防を」とすすめられて、驚かれる飼い主さんは少なくありません。実は猫もフィラリア(犬糸状虫症)に感染することがあり、しかも犬とは違った怖さがある病気です。症状が出にくいぶん、気づかれないまま命に関わるケースもあります。

この記事は 窪木 未津子(院長・獣医師) が監修しています。気になる症状がある場合は自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談してください。本記事では、猫のフィラリア感染のしくみ、犬との違い、室内猫でもリスクがある理由、予防薬の種類と開始時期まで、やさしく解説していきます。

✅ この記事のポイント

  • 猫もフィラリア(犬糸状虫)に感染し、命に関わることがあります
  • 犬と違って症状が出にくく、突然死につながるケースもあります
  • 完全室内飼いでも、蚊が入り込めば感染リスクはゼロではありません
  • 予防薬は月1回のスポットタイプが主流で、5〜6月頃から開始するのが一般的です
  • 気になる症状や予防の相談は、かかりつけの動物病院へ

Contents

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猫もフィラリアに感染するの?基本のしくみ

結論からお伝えすると、猫もフィラリアに感染します。フィラリアはもともと犬を主な宿主とする寄生虫ですが、蚊を介して猫にも感染することがわかっています。まずは、感染の流れを整理しておきましょう。

フィラリアってどんな寄生虫?

フィラリア(犬糸状虫)は、そうめんのような細長い形をした寄生虫です。感染すると、心臓や肺の血管に寄生し、循環や呼吸に大きな影響を及ぼします。犬の場合、成虫が心臓に住みつくことでよく知られていますが、猫でも同じような場所に寄生することがあります。

感染は「蚊」を介して起こる

フィラリアは、感染した動物(主に犬)の血を吸った蚊が、次の動物を刺すことで広がります。蚊の体内でフィラリアの幼虫が成長し、その蚊が猫を刺したときに感染が成立します。つまり、蚊がいる環境なら、猫にも感染の可能性があるということです。

犬と猫では「寄生虫にとっての住みやすさ」が違う

猫は犬に比べて、フィラリアにとっては「本来の宿主ではない」ため、体内で成虫にまで育たないことも多くあります。ですが、育ちきらない幼虫でも猫の体に強い炎症を起こし、深刻な症状につながることがわかってきています。「成虫が少ないから軽症」というわけでは決してありません。

犬と猫のフィラリア、どこが違うの?

同じフィラリア症でも、犬と猫では病気の現れ方が大きく異なります。この違いを知っておくことが、猫の予防を考える上でとても大切です。

寄生する虫の数が少ない

犬では心臓や肺動脈に数十匹の成虫が寄生することもありますが、猫では1〜数匹程度にとどまることが多いといわれています。「数が少ないなら安心」と思ってしまいそうですが、猫の体は犬よりも小さく、心臓や肺血管も細いため、わずか1匹の寄生でも大きなダメージになることがあります。

症状が出にくく、気づかれにくい

犬のフィラリア症は、咳や運動を嫌がる、腹水がたまるなど、比較的わかりやすい症状が出ます。一方で猫は、症状が乏しかったり、あっても「なんとなく元気がない」「時々咳をする」といったあいまいなサインしか出ないことも少なくありません。

そのため、飼い主さんが気づかないまま経過し、ある日突然、呼吸困難や急死という形で発覚することもあります。これが猫のフィラリア症の最も怖いところです。

治療法が確立されていない

犬の場合、フィラリア成虫を駆除する薬がありますが、猫では確立された成虫駆除薬がありません。無理に駆除しようとすると、死んだ虫が血管を詰まらせて命に関わる恐れがあるためです。そのため、猫のフィラリア症は「治す」より「予防する」ことがすべてと言っても過言ではありません。

犬猫のフィラリア症の違いまとめ

項目
寄生する虫の数数匹〜数十匹1〜数匹程度
症状咳・元気消失・腹水など乏しい、または突然死
診断のしやすさ血液検査で比較的わかりやすい検査で見つけにくい
成虫を駆除する治療あり確立されていない
対策の中心予防+治療予防が最重要

症状が出にくいのに怖い理由

「症状が出にくいなら、それほど心配しなくてもよいのでは?」と感じるかもしれません。しかし、猫のフィラリア症は「静かに進行して、ある日突然表に出る」タイプの病気だからこそ、注意が必要なのです。

あいまいなサインしか出ないことが多い

猫がフィラリアに感染したとき、みられることがあるサインは次のようなものです。

  • 時々咳をする
  • 呼吸が速い、または浅い
  • 吐くことが増えた
  • 食欲が落ちた
  • 体重が減ってきた
  • なんとなく元気がない

いずれも「フィラリアに特徴的」とは言いにくい症状ばかりです。喘息や心臓病、消化器の病気などと見分けがつきにくく、他の病気を疑って検査を進めるうちに、後からわかることもあります。

診断そのものが難しい

犬のフィラリア検査では、成虫の抗原を血液検査で調べる方法が広く使われています。ですが猫では成虫の数が少なく、オスだけ/メスだけが寄生していることもあるため、抗原検査では陽性になりにくいのです。抗体検査・レントゲン・超音波検査などを組み合わせても、確定診断が難しい病気とされています。

突然死につながることがある

猫のフィラリア症で最も恐ろしいのが、急性の呼吸困難や突然死を起こしうることです。これは、体内でフィラリアの虫体が死んだ際に、肺の血管に強い炎症反応(HARDと呼ばれる状態)が起きるためと考えられています。前触れがなく発症することもあり、「昨日まで元気だったのに」というケースも報告されています。

⚠️ こんなときは要注意

猫が急に呼吸を苦しそうにする、口を開けてハアハアと呼吸する、ぐったりして動かないといった様子があれば、フィラリアに限らず緊急性の高い状態です。ためらわず動物病院に連絡してください。

室内飼いの猫にもリスクがあるの?

「うちの子は完全室内飼いだから大丈夫」と思っていませんか?結論から言うと、完全室内飼いの猫でもフィラリア感染のリスクはゼロではありません。実際、海外の調査では、フィラリアに感染した猫のうち一定の割合が「室内飼い」だったという報告もあります。

蚊は簡単に室内へ入ってくる

玄関のドアを開けた一瞬、換気のために窓を開けたわずかな時間、網戸のちょっとした隙間──蚊は思いのほか簡単に室内へ入り込みます。ベランダに出た人の服にとまってきたり、宅配便の受け取り時にすっと入ってきたり、と経路はさまざまです。

猫は「刺されていること」に気づきにくい

猫の体は毛におおわれているため、蚊に刺されても飼い主さんはなかなか気づけません。刺されやすいのは、耳のふち・鼻先・肉球など毛の薄い部分です。「見た目に変化がないから刺されていない」とは言い切れないのが実情です。

集合住宅や1階のお部屋は特に注意

マンションの1階や、庭・植え込みが近い部屋、水がたまりやすい環境が近くにある住宅では、蚊の侵入リスクが高くなります。夏場の夕方など、蚊の活動が活発になる時間帯には、窓の開閉を最小限にする、網戸の破れをチェックするといった工夫も予防の一助になります。

室内でくつろぐ猫
Photo by 大 董 on Pexels

猫のフィラリア予防|薬の種類と開始時期

猫のフィラリア症は、予防でしっかり守ってあげることが基本です。ここでは、予防薬の種類や開始時期の目安をご紹介します。実際の投与は必ず動物病院で相談の上、獣医師の指示に従ってくださいね。

予防薬の主な種類

猫のフィラリア予防薬は、犬と違いスポットオンタイプ(皮膚に垂らすタイプ)が主流です。錠剤を嫌がる子や、投薬が難しい子でも取り入れやすいのが特長です。

  • スポットオンタイプ:首の後ろの皮膚に月1回垂らすタイプ。ノミ・ダニやお腹の寄生虫を同時に予防できる製品もあります
  • 錠剤タイプ:飲ませられる子には選択肢のひとつ。獣医師と相談の上で使い分けます

製品によって予防できる寄生虫の範囲が異なるため、生活環境や他の子との同居状況などをふまえ、かかりつけの獣医師と相談して選んでいきましょう。

開始時期の目安

フィラリア予防は、蚊が出始めてから約1か月後にスタートし、蚊がいなくなってから約1か月後まで続けるのが基本です。地域や気候にもよりますが、東京近郊では次のような時期が目安になります。

タイミング目安
予防開始5〜6月頃
投与間隔月1回
予防終了11〜12月頃

最近は温暖化の影響で、蚊の活動期間が長くなっているという声もあります。正確な開始・終了時期は、地域とその年の気候に合わせて獣医師と相談して決めましょう。

予防前にチェックしておきたいこと

予防を始める前には、いくつか確認しておきたいポイントがあります。

  • 体調や持病の有無(腎臓病・肝臓病がある場合は要相談)
  • ノミ・ダニなど、あわせて予防したい寄生虫の種類
  • 他のペット(犬・多頭飼いの猫など)との予防バランス
  • 去年の予防状況・使用したお薬

特に、しばらく予防をしていなかった猫や、初めて予防を検討する場合は、事前の健康チェックが安心です。

💡 ワンポイント

「同居の犬にはフィラリア予防をしているけれど、猫にはしていない」というご家庭は少なくありません。ですが、家の中で蚊に刺されるリスクは犬も猫も同じです。多頭飼いの場合は、あわせて予防を検討してみてください。

受診の目安とかかりつけへの相談

猫のフィラリア症は、症状が出てからでは対応が難しくなる病気です。だからこそ、「気になるサインがある」「予防を検討したい」段階でのご相談が大切になります。

こんな症状があれば早めに相談を

次のような様子が続く場合は、フィラリアに限らず何らかの体調変化が隠れている可能性があります。

  • 時々咳をする、呼吸が速い
  • 運動をしたわけでもないのに息が荒い
  • 元気がない・食欲が落ちている状態が続く
  • 吐くことが増えた
  • 体重がじわじわ減ってきた

体調の変化に気づいたとき、「いつもと違う」と感じる飼い主さんの感覚はとても大切です。急に隠れて出てこないなどのサインもあわせて観察してみてください。

予防のご相談も気軽に

「うちの子にも予防が必要かな?」「どの薬が合うかわからない」など、予防の段階でのご相談も歓迎です。生活環境(完全室内/ベランダに出る/多頭飼育など)を教えていただければ、その子に合った予防プランをご提案できます。夏に向けて、熱中症や脱水などとあわせて、フィラリア対策も一緒に考えていくと安心です。

健康診断とあわせて

予防薬を開始する前に、体調全体を確認できる健康診断もおすすめです。特にシニア猫や持病がある子では、血液検査などで体の状態を把握したうえで予防を始めると、より安全に取り組めます。富士見台どうぶつ病院では、一般診療に加えて眼科・泌尿器科の専門外来もあり、体全体のケアの一部として予防をご一緒に検討いただけます。

まとめ

猫にもフィラリア予防は必要か──答えは「はい、必要です」です。犬と比べて症状が出にくく、診断も難しく、治療もままならないという特徴があるからこそ、予防で守ってあげることが何より大切な病気です。

完全室内飼いだからと油断せず、蚊の入り込むわずかな隙にも意識を向けてみてください。月1回のスポットタイプなど、猫にも取り入れやすい予防薬があります。開始時期は地域や気候によって異なるため、かかりつけの動物病院と相談しながら、その子に合ったペースで進めていきましょう。

「うちの子には必要かな?」と迷ったときは、まずはお気軽にご相談ください。夏を安心して過ごすための一歩として、フィラリア予防を今年から始めてみませんか。

よくある質問

Q. 完全室内飼いの猫でも本当にフィラリア予防は必要ですか?

A. 蚊は玄関や窓のわずかな隙間から室内に入り込みます。海外の調査でも、フィラリアに感染した猫のうち一定割合は室内飼いだったとされており、完全室内飼いでもリスクはゼロではありません。予防をおすすめする獣医師が多いのはそのためです。

Q. 猫のフィラリア予防はいつからいつまで行えばよいですか?

A. 東京近郊では5〜6月頃に開始し、11〜12月頃まで月1回投与するのが一般的です。ただし、地域やその年の気候により変わるため、正確な時期はかかりつけの動物病院で相談して決めるのが安心です。

Q. 予防薬は錠剤とスポットタイプ、どちらがよいですか?

A. 猫の場合、首の後ろに垂らすスポットオンタイプが取り入れやすく、主流になっています。ノミやお腹の寄生虫を同時に予防できる製品もあります。その子の性格や生活環境に合わせて、獣医師と一緒に選んでいきましょう。

Q. 予防を忘れてしまった月があります。どうすればよいですか?

A. まずは自己判断で追加投与せず、動物病院に相談してください。忘れた期間や体調をふまえ、必要に応じて検査や再スタートの方法をご案内します。次回からは投与日をカレンダーに書き込むなど、忘れにくい工夫も取り入れてみましょう。

Q. フィラリアの検査は猫にもした方がよいですか?

A. 猫のフィラリア検査は犬に比べて難しく、必ずしもルーチンで行うものではありませんが、症状や生活歴によっては検査が有用なことがあります。健康診断とあわせて、獣医師と相談のうえで判断していきましょう。

監修:窪木 未津子(院長・獣医師)/麻布大学獣医学部卒業、ヤマザキ動物専門学校卒業。群馬県出身。埼玉県・東京都の動物病院での勤務を経て、富士見台どうぶつ病院 院長。獣医師・動物看護師の資格に加え、トリミングやドッグトレーニングの知識・技術をもち、暮らしのちょっとした悩みから病気・ケガの相談まで幅広く対応しています。

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