猫も熱中症になるの?室内で気をつけたいサインと夏の応急処置

「エアコンをつけているのに、なんだか元気がない…」「留守番から帰ってきたら、猫がぐったり横になっている」
夏になると、そんな不安を感じる飼い主さんが増えてきます。犬に比べて話題になりにくいものの、猫も室内でしっかり熱中症になります。特に閉め切ったマンションや、日当たりのよい部屋で過ごす子は要注意です。
この記事は 窪木 未津子(院長・獣医師) が監修しています。気になる症状がある場合は自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談してください。本記事では、猫が室内で熱中症になる理由、見逃したくない危険なサイン、その場でできる応急処置、エアコンや留守番時の工夫まで、わかりやすく解説します。
✅ この記事のポイント
- 猫は汗をかきにくく、閉め切った室内でも熱中症になります
- 口を開けてハアハア呼吸する「パンティング」は危険なサインです
- 室温は26〜28℃・湿度50〜60%を目安に、留守番中もエアコンをつけっぱなしにしましょう
- ぐったり・よだれ・ふらつきがあれば、体を冷やしながらすぐに動物病院へ連絡してください
Contents
猫も熱中症になるの?室内でも起こる理由
結論からお伝えすると、猫も熱中症になります。しかも、屋外よりも「閉め切った室内」で起こるケースが少なくありません。犬のようにハアハアと激しく呼吸することが少ないため、飼い主さんが異変に気づいたときには、すでに重症化していることもあります。
まずは、猫がなぜ暑さに弱いのか、その体のしくみを知っておきましょう。
猫は汗をかいて体温を下げるのが苦手
人間のように全身の皮膚から汗をかいて体温を下げる、ということが猫にはできません。汗腺があるのは肉球など、ごく限られた部分だけ。基本的には毛づくろい(グルーミング)で唾液を体に塗り、その気化熱でわずかに体温を下げているだけです。
そのため、いったん体温が上がってしまうと、自力で下げるのに時間がかかります。人が「これくらい大丈夫」と感じる室温でも、猫にとっては危険な暑さになっていることがあるのです。
閉め切った室内は想像以上に高温になる
夏場、日中の締め切った室内は外気温より高くなることがあります。特に、日差しが差し込む窓際、風の通らない部屋、上階のマンションなどは、真夏には室温が35℃を超えることも珍しくありません。
「窓を少し開けているから大丈夫」「日陰があるから平気」と思っていても、湿度が高ければ体温は下がりにくく、熱中症のリスクは高まります。
特に注意したい猫
次のような猫は、熱中症のリスクが高めです。
- 子猫・シニア猫(体温調節が未熟/衰えている)
- 肥満気味の猫
- 鼻が短い種類(ペルシャ、エキゾチックショートヘアなど)
- 長毛種(ノルウェージャン、メインクーンなど)
- 心臓病・腎臓病・呼吸器疾患などの持病がある猫
当てはまる子と暮らしている場合は、夏場の室内環境にいつも以上の配慮が必要です。

見逃したくない熱中症の危険なサイン
猫の熱中症は、初期のサインを見逃さないことが何より大切です。次のような様子があれば、体温が上がりすぎている可能性を考えてください。
初期に現れやすいサイン
次のような変化は、熱中症の入り口かもしれません。
- いつもより落ち着きがなく、ウロウロする
- 床の冷たい場所を探して寝転がる
- 呼吸がやや速い、浅い
- 毛づくろいがいつもより多い
- 水をがぶ飲みする
この段階で気づいて涼しい環境に移してあげられれば、大事に至らないことが多いです。
要注意のサイン
次のような様子は、すでに体に負担がかかっている状態です。
- パンティング(犬のように口を開けてハアハア呼吸する)
- よだれを大量に垂らす
- ぐったりして呼びかけへの反応が鈍い
- ふらつく、まっすぐ歩けない
- 歯ぐきや舌の色が濃い赤・紫っぽい
- 嘔吐や下痢
猫が口を開けて呼吸するのは、それ自体が「かなり苦しい」というサインです。犬とは違い、通常の猫はほとんどパンティングをしないため、見かけたら要注意と考えてください。
命に関わる状態
次のような様子は、すぐに対応が必要な緊急事態です。
- けいれんしている
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- ぐったりして立ち上がれない
- 血尿・血便が出ている
- 体を触るとやけどしそうなほど熱い
⚠️ こんなときは要注意
パンティング・大量のよだれ・ぐったりが揃っているときは、猫の熱中症としてかなり進んだ状態です。応急処置と並行して、必ず動物病院に電話をしてから向かってください。
熱中症かも?その場でできる応急処置
猫の様子から熱中症が疑われるときは、「体を冷やしながら、動物病院に連絡」が基本です。獣医師の指示を仰ぎながら、以下のような応急処置を行いましょう。
ステップ①:涼しい場所へ移す
まずは、エアコンの効いた部屋や風通しのよい涼しい場所へ移動させます。日光が当たっている場合は、すぐに日陰へ。移動が難しい場合は、扇風機やサーキュレーターの風を送るだけでも違います。
ステップ②:体をやさしく冷やす
次に、体を冷やします。ポイントは「急に冷やしすぎない」こと。氷水や保冷剤を直接あてると、血管が急激に縮んでかえって体温が下がりにくくなることがあります。
- 常温〜ぬるめの水で濡らしたタオルを、体全体にやさしくかける
- 脇の下・内もも・首まわり(太い血管がある場所)を重点的に冷やす
- 濡れタオルの上から扇風機の風をあてる
- 保冷剤を使う場合はタオルで包み、直接皮膚に当てない
ステップ③:水を飲めるようにする
意識がしっかりしていて、自分で顔を上げられる状態なら、新鮮な水を飲みやすい場所に置いてあげてください。無理に口の中へ水を流し込むのは、誤嚥(気管に水が入る)につながるので絶対にやめましょう。
ステップ④:動物病院へ連絡
症状が軽そうに見えても、熱中症は時間差で悪化することがあります。腎臓や肝臓、血液の凝固など、内臓に大きな負担がかかっているためです。落ち着いてきたように見えても、必ず動物病院に電話をして、受診の必要性を相談してください。
💡 ワンポイント
病院へ向かう車内でも、体を冷やし続けることが大切です。保冷剤をタオルで包んだものをキャリーの中に入れる、車内を先に冷やしておくなど、移動中の暑さ対策も忘れずに。
夏の室温はどのくらい?エアコンの目安と使い方
熱中症を防ぐために、最も確実で大切なのが室温と湿度のコントロールです。「猫は寒がりだから」とエアコンを控えめにしがちですが、夏場はむしろ積極的に使ってあげてください。
推奨される室温・湿度の目安
一般的に、夏場の室内は次のような環境が目安とされます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 室温 | 26〜28℃前後 |
| 湿度 | 50〜60%程度 |
| エアコンの設定 | 冷房または除湿。直接風が当たらない向きに |
ただし、これはあくまで一般的な目安です。年齢・体格・持病によって快適な温度は変わりますので、猫の様子を見ながら調整してあげてください。エアコンの温度設定については、関連するコラムもあわせて参考にしていただければと思います。
湿度にも要注意
意外と見落とされがちなのが湿度です。同じ28℃でも、湿度が80%を超えると体感温度は大きく上がり、熱中症のリスクも高まります。梅雨明けから夏場にかけては、除湿機能やエアコンのドライモードも上手に使いましょう。
エアコンが苦手な子への配慮
寒がりの猫には、冷えすぎないよう次のような工夫を。
- エアコンの風が直接当たらない位置に、寝床を用意する
- 毛布やベッドを部屋の一角に置き、暖かい場所も選べるようにする
- キャットタワーなど、暖かい上の段と涼しい下の段を行き来できるようにする
「涼しい場所」と「そこそこ暖かい場所」の両方があると、猫が自分で快適な場所を選べます。

留守番中の暑さ対策|家を空けるときの工夫
飼い主さんが仕事や外出で家を空ける時間帯こそ、熱中症のリスクが最も高まります。留守中は誰も異変に気づけないため、「環境で防ぐ」ことが何より重要です。
エアコンはつけっぱなしが基本
夏場、日中に家を空けるなら、エアコンはつけっぱなしにしましょう。「もったいないから」とタイマーで切れる設定にすると、切れたあとに一気に室温が上がり、その時間帯に熱中症を起こしてしまうことがあります。
電気代が気になる場合も、設定温度を少し高めにするなどで対応し、冷房そのものは切らないようにしましょう。
停電・エアコン故障への備え
近年は、真夏の停電やエアコンの突然の故障もめずらしくありません。次のような備えがあると安心です。
- スマホで室温を確認できる温湿度計を設置する
- スマートリモコンでエアコンの遠隔操作ができるようにする
- 複数の部屋を自由に行き来できるよう、ドアを開けておく
- 凍らせたペットボトルをタオルで包み、涼める場所に置いておく
- 水飲み場を複数用意する(倒れてもいいよう、器を分散配置)
お風呂場・玄関を「涼み場所」に
お風呂場のタイルや玄関の土間など、ひんやりした場所を猫は本能的に知っています。留守中も自由に出入りできるようドアを開けておくと、猫が自分で涼しい場所を選べます。ただし、脱走の危険がない安全な範囲に限って開けるようにしてください。
キャリーやケージに閉じ込めない
通院や引っ越し時など、猫をキャリーやケージに入れて留守番させるのは特に危険です。狭い空間は熱がこもりやすく、逃げ場もありません。やむを得ない場合は、必ず涼しい部屋で、水を飲めるようにし、短時間で済ませましょう。
⚠️ 車内での留守番は絶対にNG
「ほんの数分だから」と車内に猫を残すのは絶対にやめてください。真夏の車内は数分で50℃を超えることがあり、命に関わります。買い物などで移動する際も、車内に置いたままにしないよう十分注意してください。
熱中症を疑ったらすぐ動物病院へ
熱中症は、見た目が回復したように見えても、数時間〜数日後に内臓のダメージが表面化することがあります。「元気になったから大丈夫」と自己判断せず、疑いがある時点で動物病院に相談することが大切です。
迷ったら電話で相談を
「熱中症かどうか分からない」「病院に連れて行くべきか判断がつかない」というときは、まずかかりつけの動物病院に電話をしてみてください。症状を伝えることで、家での対応や受診の緊急度についてアドバイスをもらえます。
診察時に伝えたいこと
受診の際、次のような情報をまとめておくと診察がスムーズです。
- いつから、どんな症状が出ているか
- そのときの室温・湿度・エアコンの状況
- 行った応急処置(体を冷やした・水を飲ませたなど)
- 持病や普段飲んでいる薬
- 直近の食事・排尿・排便の様子
富士見台どうぶつ病院では、一般診療で熱中症の対応も行っています。夏場の急な体調変化で不安なときは、遠慮なくご連絡ください。
まとめ
猫も、閉め切った室内で熱中症になります。汗をかきにくく体温調節が苦手なうえ、犬のようにパンティングをすることが少ないため、飼い主さんが気づいたときには重症化していることもあるので注意が必要です。
予防の基本は、室温26〜28℃・湿度50〜60%を目安に、夏場はエアコンをつけっぱなしにすること。留守番中も冷房を切らず、涼しい場所を自由に選べる環境を用意してあげましょう。
パンティング・大量のよだれ・ぐったり・ふらつきなどが見られたら、涼しい場所で体をやさしく冷やしながら、すぐに動物病院に連絡してください。熱中症は時間との勝負です。「なんだかいつもと違うかも」と感じた時点で相談することが、愛猫を守る一番の近道になります。
よくある質問
Q. 猫がハアハア口で呼吸しています。これは熱中症ですか?
A. 猫は通常、犬のように口を開けて呼吸することはほとんどありません。パンティングが見られる場合、熱中症のほかに、強いストレスや心臓・呼吸器の病気の可能性もあります。いずれにしても異常なサインなので、涼しい場所に移し、すぐに動物病院に連絡してください。
Q. エアコンの設定温度は何度にすればいいですか?
A. 一般的には冷房26〜28℃、湿度50〜60%が目安です。ただし、年齢・体格・持病によって快適な温度は変わります。猫が涼しい場所と暖かい場所を自分で選べるよう、寝床や毛布を複数用意してあげるとより安心です。
Q. 留守番中もエアコンはつけっぱなしで大丈夫ですか?
A. 夏場の日中は、つけっぱなしをおすすめします。タイマーで切れると、その後に室温が急上昇し、留守中に熱中症を起こす危険があります。設定温度を少し高めにしても構わないので、冷房そのものは切らないようにしてください。
Q. 熱中症のとき、氷水で一気に冷やしてもいいですか?
A. 急激な冷却はおすすめしません。血管が急に縮んで、かえって体温が下がりにくくなったり、ショック状態を招くことがあります。常温〜ぬるめの水で濡らしたタオルを体にあて、脇の下・内もも・首まわりを中心に、扇風機の風を送りながらやさしく冷やしましょう。
Q. 症状が落ち着いたら病院に行かなくても大丈夫ですか?
A. 見た目が回復しても、腎臓や肝臓、血液の凝固など内臓にダメージが残っていることがあり、数時間〜数日後に悪化するケースもあります。少しでも熱中症が疑われた場合は、落ち着いてから改めて動物病院で診てもらうと安心です。
監修:窪木 未津子(院長・獣医師)/麻布大学獣医学部卒業、ヤマザキ動物専門学校卒業。群馬県出身。埼玉県・東京都の動物病院での勤務を経て、富士見台どうぶつ病院 院長。獣医師・動物看護師の資格に加え、トリミングやドッグトレーニングの知識・技術をもち、暮らしのちょっとした悩みから病気・ケガの相談まで幅広く対応しています。
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