猫がよだれを垂らしている|考えられる原因と受診の目安

「うちの子が、いつの間にかよだれを垂らしている…」「口の周りがいつも濡れていて、なんだか心配」
普段あまりよだれを垂らさない猫が口元を濡らしていると、ドキッとしてしまいますよね。リラックスしているだけのこともあれば、口の中のトラブルや、もっと深刻な病気・中毒が隠れていることもあります。
この記事は 窪木 未津子(院長・獣医師) が監修しています。気になる症状がある場合は自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談してください。本記事では、猫のよだれの原因を「様子を見てよいもの」と「すぐ受診が必要なもの」に分けて、見分けるポイントをわかりやすく解説します。
✅ この記事のポイント
- 猫のよだれは「リラックス」など生理的なものと、病気が隠れている病的なものに分かれます
- 口内炎・歯周病・口の中の異物は、よだれの代表的な原因です
- 誤食や中毒は短時間で命に関わることがあり、すぐに動物病院へ連絡が必要です
- 血が混じる・においが強い・ぐったりしている場合は様子を見ず受診しましょう
Contents
猫はもともとよだれを垂らしやすい動物?
結論からお伝えすると、猫は犬と比べてよだれが目立ちにくい動物です。そのため、明らかによだれを垂らしているときは「何かしらの理由がある」と考えたほうがよいでしょう。
ただし、すべてのよだれが病気のサインというわけではありません。まずは正常な範囲のよだれと、注意したいよだれの違いを知っておきましょう。
生理的なよだれ(一時的・自然なもの)
撫でられて気持ちよくゴロゴロしているとき、まどろんでいるとき、寝ているときなど、リラックスしている場面で少量のよだれが出ることがあります。これは副交感神経が優位になり、唾液の分泌が増えるためで、健康な猫にも起こります。
また、苦い薬を飲んだあとや、お気に入りのおやつを目の前にして「期待」しているときも、一時的によだれが増えることがあります。短時間で治まり、本人がケロッとしているなら大きな心配はいりません。
注意したい病的なよだれ
一方で、持続的に・量が多く・においが強いよだれは、口の中や全身に何らかの異常があるサインの可能性があります。特に、食欲が落ちている、口を気にして前足でこする、よだれに血が混じる、といった様子があれば、すぐに動物病院で診てもらいましょう。

よだれの原因①:口の中のトラブル
猫のよだれで最も多い原因が、口の中の病気です。痛みや違和感があると、うまく唾液を飲み込めずによだれとして垂れてきます。
歯周病・歯肉炎
歯の周りに歯石や細菌がたまり、歯ぐきが腫れて出血しやすくなる病気です。進行すると強い口臭・出血混じりのよだれ・食べづらそうな様子が見られます。シニア猫に特に多く、放置すると歯が抜けたり、細菌が全身に回ったりすることもあります。
口臭やお口のケアについては、猫の口臭が気になる|歯みがきは必要?歯周病のサインと予防 もあわせてご覧ください。
口内炎(難治性口内炎)
猫は慢性口内炎に悩まされることが多い動物です。口の奥や歯ぐきが真っ赤に腫れ、強い痛みのためにねばつくよだれを大量に垂らすことがあります。ご飯の前で「食べたいのに食べられない」と鳴く子も少なくありません。
原因はウイルス感染や免疫の異常など複数あり、治療には専門的な判断が必要になります。
口の中の腫瘍
シニア猫では、口の中にしこり(腫瘍)ができてよだれが増えることもあります。片側だけよだれが多い・顔の形が左右で違う・血が混じるといった場合は、早めに診察を受けましょう。
⚠️ こんなときは要注意
よだれに血が混じる、強い口臭がある、食欲が落ちている、口を触られるのを極端に嫌がる——これらは口の中で何かが起きているサインです。様子を見ず、早めに動物病院で口腔内をチェックしてもらいましょう。
よだれの原因②:口の中の異物・ケガ
「さっきまで元気だったのに、急によだれを垂らし始めた」という場合、口の中に異物が引っかかっている可能性があります。短時間で症状が出るため、気づきやすい原因です。
糸・ひも・釣り糸など
猫はひも状のものに興味を持ちやすく、舌の根元に糸が引っかかってしまうことがあります。口をくちゃくちゃする・前足で口をこする・大量のよだれが代表的なサインです。引っ張って取ろうとすると内臓を傷つける危険があるため、絶対に無理に引き抜かないでください。
骨・草・植物のトゲ
魚や鶏の骨が歯の間や上あごに挟まることもあります。観葉植物の葉やトゲが刺さっているケースもあり、これらは口を開けたまま・しきりに頭を振るといった行動につながります。
口の中のケガ
硬いものをかじって歯が欠けたり、舌や頬の内側を噛んでしまったりすると、その痛みでよだれが増えます。出血を伴う場合は受診をおすすめします。
よだれの原因③:誤食・中毒(緊急性が高い)
大量のよだれが急に出てきたときに、絶対に見逃してはいけないのが中毒です。中毒は短時間で命に関わることがあり、迷っている間にも症状が進んでしまいます。
猫にとって危険なもの
家の中には、猫にとって有害なものが意外と多く存在します。代表的なものを表にまとめました。
| 分類 | 代表的なもの |
|---|---|
| 植物 | ユリ類(特に危険)、ポトス、アジサイ、チューリップなど |
| 食品 | ネギ類、チョコレート、ぶどう・レーズン、アルコールなど |
| 薬・日用品 | 人の医薬品、保冷剤、洗剤、防虫剤、たばこなど |
| 外用薬 | 犬用のノミダニ駆除薬(猫に使ってはいけないもの)など |
これらを口にした場合、大量のよだれ・嘔吐・ぐったり・けいれんなどが見られることがあります。「ちょっと舐めただけだから」と様子を見ているうちに重症化することもあるため、疑いがある時点ですぐに動物病院へ連絡してください。
苦み・刺激によるよだれ
毒性は低くても、強い苦みや刺激のあるもの(観葉植物の汁、洗剤など)を舐めただけで反射的に大量のよだれが出ることもあります。短時間で治まることが多いですが、何を舐めたか分からない場合は念のため相談を。
⚠️ 中毒が疑われるとき
「何を・いつ・どのくらい口にしたか」をメモして、すぐに動物病院に電話してください。可能であれば、口にしたもののパッケージや残りを一緒に持参すると診断・治療に役立ちます。吐かせるかどうかの判断は獣医師に任せてください。

よだれの原因④:全身の病気が隠れていることも
口の中に明らかな異常がなくても、全身の病気の症状としてよだれが出ることがあります。シニア猫では特に注意したいポイントです。
腎臓病
慢性腎臓病が進行すると、体内に老廃物がたまって口の中に潰瘍ができ、よだれや口臭、食欲低下が見られることがあります。多飲多尿・体重減少を伴うことが多く、シニア猫では特に多い病気です。
消化器の不調・吐き気
気持ち悪い・吐きそうなときにも、よだれが増えます。毛玉や異物による消化管トラブル、胃腸炎などが原因のことがあります。吐く回数が多い・元気がない場合は受診をおすすめします。
神経の病気・てんかん
けいれんの前後や、神経の異常で口がうまく閉じられないときにも、よだれが流れ続けることがあります。意識がもうろうとしている、体がガクガクしているといった様子があれば、急いで動物病院へ。
熱中症
夏場や閉め切った室内で、ぐったりしながら口を開けて呼吸し、よだれを垂らしている場合は熱中症のサインかもしれません。すぐに涼しい場所へ移し、動物病院に連絡してください。
受診の目安|こんなときはすぐ動物病院へ
よだれの原因はさまざまですが、判断に迷ったら「いつもと違う様子があるか」を基準にしましょう。
すぐに受診したいサイン
次のような様子が見られたら、様子を見ずに動物病院へ連絡してください。
- よだれに血が混じっている
- 大量のよだれが急に出てきた
- ぐったりしている・呼吸が荒い・けいれんしている
- 有害な植物・薬・食品を口にした可能性がある
- 口を開けたまま閉じられない、頭を振り続ける
- 口の周りや顔が腫れている
早めに受診したいサイン
緊急ではなくても、次のような様子が続く場合は早めの受診をおすすめします。
- 強い口臭がある
- 食欲が落ちている、食べづらそうにしている
- 口を前足でしきりにこする
- 体重が減ってきた
- 毛づくろいの際に口元だけが濡れている状態が続く
💡 ワンポイント
受診の前に「いつから・どんなときに・どのくらいの量のよだれが出ているか」をスマホで動画に撮っておくと、診察時にとても役立ちます。普段の様子と比べて変化が分かるよう、客観的な記録を残しておきましょう。
おうちでできる予防と日々のケア
よだれの原因の多くは、日頃のケアと環境づくりで予防できます。気になる症状が出る前から、できることを習慣にしておきましょう。
口の中を清潔に保つ
歯周病や口内炎の予防には、歯みがき習慣がとても効果的です。いきなり歯ブラシでなくても、ガーゼや指サックタイプから始めて、口の中を触られることに少しずつ慣らしていきましょう。
誤食しやすいものを片付ける
糸・輪ゴム・ヘアゴム・ビニール紐などは、猫の目に触れない場所に保管します。観葉植物は、猫にとって安全かどうかを確認してから家に置くようにしましょう。特にユリ科の植物は少量でも腎不全を起こす危険があり、注意が必要です。
定期的な健康診断を受ける
口の中のトラブルや腎臓病は、初期には症状が出にくいものです。年1回(シニア期は年2回)の健康診断で、早期発見・早期ケアを目指しましょう。当院では、お口の中の状態もていねいに確認しています。
まとめ
猫のよだれには、リラックスによる一時的なものから、口内炎・歯周病・異物・中毒・全身の病気まで、さまざまな原因があります。普段あまりよだれを垂らさない猫が、量や頻度を増やしている場合は「何らかのサイン」と考えてあげてください。
特に、血が混じる・強い口臭がある・ぐったりしている・有害なものを口にした可能性がある——こうしたケースでは、迷わず動物病院へ連絡しましょう。中毒は時間との勝負になることもあります。
日々の歯みがきや、誤食しやすいものの片付け、定期的な健康診断で、よだれのトラブルは大きく減らせます。少しでも「いつもと違う」と感じたら、富士見台どうぶつ病院までお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 撫でているときによだれが少し出るのは病気ですか?
A. リラックスして副交感神経が優位になると、健康な猫でも少量のよだれが出ることがあります。短時間で治まり、口臭や食欲低下などほかの症状がなければ、基本的に心配はいりません。
Q. 急によだれが大量に出てきました。家でできることはありますか?
A. まず口の中に糸や異物が見えないか、無理のない範囲で確認してください。引っ張って取るのは危険なので絶対にしないでください。中毒が疑われる場合は、口にしたものを特定して、すぐに動物病院へ電話で相談しましょう。
Q. よだれと一緒に強い口臭があります。歯周病でしょうか?
A. 歯周病や口内炎の可能性が高いですが、腎臓病や口腔内腫瘍が原因のこともあります。自己判断せず、動物病院で口の中の状態と全身のチェックを受けることをおすすめします。
Q. ユリの花瓶の水をなめてしまったかもしれません。様子を見ても大丈夫ですか?
A. ユリは猫にとって非常に危険で、花瓶の水だけでも急性腎不全を起こす可能性があります。症状が出ていなくても、すぐに動物病院に連絡してください。早期治療がとても重要です。
Q. 子猫がよだれを垂らしています。大人猫と同じように考えてよいですか?
A. 子猫は誤食やウイルス性の口内炎(猫カリシウイルスなど)が原因のこともあり、体力の消耗が早いです。様子見をせず、早めに動物病院で診察を受けるようにしてください。
監修者
監修:窪木 未津子(院長・獣医師)/麻布大学獣医学部卒業、ヤマザキ動物専門学校卒業。群馬県出身。埼玉県・東京都の動物病院での勤務を経て、富士見台どうぶつ病院 院長。獣医師・動物看護師の資格に加え、トリミングやドッグトレーニングの知識・技術をもち、暮らしのちょっとした悩みから病気・ケガの相談まで幅広く対応しています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。気になる症状がある場合は、自己判断せずにかかりつけの動物病院にご相談ください。
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