猫にマダニがついていたら?無理に取ってはいけない理由と運ぶ病気

「猫の体に黒いイボのようなものがついている…これって何?」「見つけたから引き抜こうとしたら、皮膚にがっちり食いついていて取れない…」
庭やベランダに出た猫、脱走から戻ってきた猫の体に、黒い粒のようなものを見つけて驚いた経験はありませんか?それはマダニかもしれません。マダニは、ノミよりずっと大きく、皮膚に強く食いつくやっかいな寄生虫です。しかも、無理に引き抜くと思わぬトラブルにつながり、人にもうつる怖い感染症を運んでいることもあります。
この記事は 窪木 未津子(院長・獣医師) が監修しています。気になる症状がある場合は自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談してください。本記事では、マダニとノミの違い、自分で引き抜くことの危険性、見つけたときの正しい対応、マダニが媒介する病気、予防と受診の目安までをやさしく解説していきます。
✅ この記事のポイント
- マダニは無理に引き抜くと口が皮膚に残り、化膿や感染症の原因になります
- マダニはSFTSなど人にもうつる感染症を媒介するため注意が必要です
- ノミより大きく、皮膚に食いついて動かないのがマダニの特徴です
- 見つけたら触らず、そのまま動物病院に連れて行くのが安全です
- 月1回のスポットタイプ予防薬で、ノミとまとめて予防できます
Contents
猫についているのはマダニ?ノミとの見分け方
結論からお伝えすると、マダニとノミはまったく別の寄生虫です。大きさ、動き方、皮膚での様子がそれぞれ違うため、まずは「今ついているのがどちらなのか」を落ち着いて確認することが大切です。
マダニは「イボのように皮膚に食いついている」
マダニは、吸血前で2〜3mm、吸血後は小豆やブドウ粒ほど(1cm前後)まで膨らむこともある寄生虫です。皮膚にしっかり口を差し込んで固定するため、ぱっと見では動かず、まるで「黒〜灰色のイボ」や「ホクロ」のように見えます。
猫の場合、毛の薄い耳のふち・目のまわり・あご・お腹・内股・指のあいだなどに付いていることが多く、ブラッシングやスキンシップのときに気づくことが多いです。
ノミは「小さくてすばやく動く」
一方、ノミは体長1〜2mm程度の小さな虫で、皮膚に食いつくのではなく、毛の間をピョンピョンと素早く跳び回ります。黒い粒状の「ノミの糞」が毛の中に落ちていることでも気づけます。詳しくは同じく蚊が運ぶ病気(フィラリア)と同時期に対策が必要な寄生虫として、あわせて理解しておくと安心です。
マダニとノミの違いまとめ
| 項目 | マダニ | ノミ |
|---|---|---|
| 大きさ | 2〜3mm(吸血後は1cm前後) | 1〜2mm |
| 動き | 皮膚に食いついて動かない | すばやく跳ねる |
| 見た目 | イボやホクロのよう | 黒い小さな粒 |
| 運ぶ病気 | SFTSなど(人にもうつる) | 瓜実条虫、皮膚炎など |

なぜマダニを自分で引き抜いてはいけないの?
マダニを見つけると、多くの飼い主さんが「早く取ってあげたい」と手が伸びてしまいます。でも、ピンセットや指で無理に引き抜くのは絶対に避けてください。理由は、見た目ではわかりにくい、いくつかの深刻なリスクがあるためです。
①口の部分が皮膚に残ってしまう
マダニは、セメントのような物質を出して口をがっちり皮膚に固定しています。そのため無理に引っ張ると、胴体はちぎれて取れても、口器(こうき)だけが皮膚の中に残ることがよくあります。残った口器は異物として皮膚に炎症を起こし、化膿・しこり・二次感染の原因になります。
②マダニの体液が猫に逆流する
もう一つの大きなリスクが、マダニの体液や唾液が猫の体内に押し戻されることです。マダニの体をつぶしたり、強く圧迫したりすると、体内にいた病原体が猫の血液中に一気に流れ込み、感染症のリスクを高めることにつながります。
③飼い主さんにも感染するおそれがある
マダニをつぶしたときに出た体液が、傷や粘膜に触れることで、飼い主さん自身が感染症にかかる可能性もあります。素手で触ったり、押しつぶしたりするのは絶対に避けましょう。
⚠️ こんなときは要注意
マダニを自分で取ろうとして「途中でちぎれてしまった」「体液が出た」「素手で触ってしまった」ときは、その部分を無理にいじらず、猫はもちろん、ご家族の体調にも数日間気を配りながら動物病院に相談してください。
猫にマダニを見つけたときの正しい対応
では、実際に猫の体にマダニを見つけたら、どう動けばよいのでしょうか。基本の答えはとてもシンプルで、「触らずに、そのまま動物病院へ連れて行く」のが一番安全です。
ステップ①落ち着いて場所と数を確認する
まずは慌てず、マダニがどこに・いくつついているかを確認しましょう。1匹だけとは限らず、複数ついていることもあります。耳・首・顔まわり・お腹・内股・指のあいだなど、毛の薄い場所を中心にチェックしてみてください。
可能であればスマートフォンで写真を撮っておくと、受診時に獣医師へ状況を伝えやすくなります。
ステップ②触らない・引っ張らない
次に大切なのは、とにかく触らないことです。ピンセット・指・ライター・アルコール・オイルなど、ネットで紹介されているさまざまな方法がありますが、家庭ではどの方法もリスクがあるため推奨できません。マダニを刺激すると、かえって体液を吐き戻し、感染リスクを高めることがあります。
ステップ③動物病院で処置してもらう
動物病院では、マダニ駆除薬を使って安全に落とす方法や、専用の器具で口器ごときれいに取り除く処置を行います。同時に、皮膚の炎症の有無や、他にマダニがついていないかも確認してもらえるので安心です。
ステップ④受診までのあいだの過ごし方
すぐに受診できない場合は、次の点に気をつけてください。
- マダニに触らない、外そうとしない
- 猫が気にして舐めたり掻いたりしないよう見守る
- ほかのペットとは少し距離をとる
- 触れた手はしっかり洗う
マダニが運ぶ怖い病気|人にもうつる感染症
マダニが特に警戒される理由が、さまざまな感染症を媒介することです。中には、猫だけでなく飼い主さんの命にも関わるものがあります。ここでは代表的なものをご紹介します。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
近年、特に注目されているのがSFTS(重症熱性血小板減少症候群)です。SFTSウイルスを持ったマダニに咬まれることで感染し、猫では発熱・元気消失・食欲不振・嘔吐・黄疸などの症状が出て、重症化すると命に関わることがあります。
怖いのは、感染した猫から人へうつることがある点です。看病していた飼い主さんが感染した事例も報告されており、猫の体液・唾液・排泄物などを扱う際には十分な注意が必要とされています。西日本を中心に発生報告がありますが、東日本でも症例が確認されており、油断はできません。
ヘモプラズマ症(猫伝染性貧血)
マダニやノミなどの吸血によって広がる可能性があるとされる病気で、赤血球に寄生する微生物が原因です。感染すると貧血・元気消失・食欲不振などが起こり、慢性化することもあります。
その他の病気
マダニは、種類や地域によって、ライム病・バベシア症・日本紅斑熱など、さまざまな病気を媒介することが知られています。人にも感染しうるものも含まれており、「小さなダニ1匹」と侮れない存在です。
⚠️ こんなときは要注意
マダニに咬まれた後、猫が発熱・ぐったり・食欲不振・黄疸(白目や歯ぐきが黄色っぽい)などを示したら、SFTSなどの感染症の可能性もあります。ためらわず動物病院へ連絡してください。看病する飼い主さんも、手洗い・マスク・傷口の保護など、しっかり感染対策を行いましょう。

猫のマダニ予防|大切なのは「つかせない」こと
マダニ対策で一番大切なのは、そもそも付かせない環境と予防薬です。治療より予防が圧倒的に安全で、猫にも飼い主さんにも負担が少ない方法です。
予防薬は月1回のスポットタイプが主流
猫のマダニ予防には、首の後ろに垂らすスポットオンタイプのお薬が広く使われています。多くの製品はノミ・マダニ・お腹の寄生虫などをまとめて予防できるようになっており、1本で幅広くカバーできるのが利点です。
市販品にも似たようなタイプがありますが、成分や安全性、他の持病との相性は動物病院で処方されるものが安心です。体重や年齢、持病に合わせた選び方を、かかりつけの獣医師と相談して決めましょう。
予防はいつからいつまで?
マダニは真冬でも活動することが知られており、地域によっては通年予防が推奨されています。特に、春〜秋(4〜11月頃)はマダニの活動が活発になる時期です。フィラリアやノミの予防薬とタイミングを合わせられる製品も多いので、まとめて相談すると管理しやすくなります。
完全室内飼いの猫にも予防は必要?
「うちは完全室内飼いだから大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、マダニは飼い主さんの服や、同居犬について家の中に入ってくることがあります。ベランダに出る子、脱走歴のある子、庭に草木がある家では特に注意が必要です。生活環境に合わせて、獣医師と相談しながら予防プランを立てましょう。
環境面でできる工夫
- 猫を草むら・やぶ・落ち葉のたまった場所に近づけない
- 庭やベランダの草はこまめに刈っておく
- 外に出た犬・人が家に入る前に、体や服をチェックする
- ブラッシングのついでに、皮膚の様子を毎日さっと確認する
💡 ワンポイント
ブラッシングは、毛玉ケアや愛情表現だけでなく、マダニやしこりを早期に発見できる大切な習慣です。特に耳の後ろ・あご下・脇・内股など、毛が薄くて指が届きにくい場所を意識してチェックしてみてください。
受診の目安|こんなときはすぐ動物病院へ
マダニを見つけたときは、基本的に「見つけたら早めに受診」が原則です。ただ、以下のような様子があれば、より急いで動物病院に連絡してあげてください。
咬まれた跡の症状
- 咬まれた場所が赤く腫れて、しこりのようになっている
- 膿が出ている、じくじくして治りが悪い
- 猫が同じ場所をしきりに舐めたり掻いたりしている
全身の症状
- 発熱している、体が熱っぽい
- 元気がなくぐったりしている
- 食欲が急に落ちた
- 嘔吐・下痢を繰り返す
- 白目や歯ぐきが黄色っぽい(黄疸)
- 歯ぐきが白っぽい(貧血のサイン)
これらは、マダニが媒介する感染症のサインとして重要なポイントです。「マダニに咬まれたあと、なんとなく調子が悪い」と感じたら、様子を見すぎず早めに相談してください。特にSFTSが疑われるような症状がある場合は、受診前に電話で「マダニに咬まれた可能性がある」ことを伝えると、病院側でも感染対策の準備がしやすくなります。
富士見台どうぶつ病院でも、マダニの除去や感染症の相談、予防薬のご提案を行っています。「ノミやマダニの予防を始めたい」「今ついているマダニをどうしたらいいかわからない」といったご相談も、お気軽にどうぞ。
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まとめ
マダニは、ノミよりずっと大きく、皮膚にしっかり食いついて動かないのが特徴です。イボやホクロのように見えるため、気づかれずに長時間吸血し続けていることもあります。
見つけたときに一番やってはいけないのが、ピンセットや指で無理に引き抜くことです。口器が皮膚に残って化膿したり、体液が逆流して感染症のリスクを高めたり、飼い主さん自身が感染してしまう恐れもあります。触らずに、そのまま動物病院へ連れて行くのが最も安全な方法です。
そして何より大切なのは、付かせない予防です。月1回のスポットタイプ予防薬なら、ノミとマダニを同時にケアできます。完全室内飼いの猫でも、飼い主さんや同居犬を介して持ち込まれる可能性があるため、生活環境に合わせた予防プランを獣医師と相談していきましょう。SFTSなど人にもうつる感染症を運ぶ寄生虫だからこそ、猫と家族みんなの健康を守るために、正しい知識と早めの行動を大切にしてくださいね。
よくある質問
Q. マダニをアルコールやライターで取ってもいいですか?
A. どちらもおすすめできません。マダニを刺激すると、体液を猫の体内に吐き戻し、かえって感染症のリスクを高めてしまう可能性があります。触らず、そのまま動物病院で処置してもらうのが安全です。
Q. マダニに咬まれた跡が黒く残っているけれど、これは何ですか?
A. マダニの口器(こうき)が皮膚に残っている可能性があります。異物として炎症やしこりの原因になることがあるため、動物病院で確認・処置してもらいましょう。無理にほじり出そうとしないでください。
Q. 完全室内飼いでもマダニ予防は必要ですか?
A. 生活環境によりますが、飼い主さんの服や同居犬を介してマダニが家に入ることがあります。ベランダに出る子、脱走歴のある子、犬と同居している場合などは特に予防をおすすめします。かかりつけの獣医師と相談して決めましょう。
Q. SFTSは本当に猫から人にうつるのですか?
A. 感染した猫の体液・唾液・血液などを介して、人が感染した事例が報告されています。マダニに咬まれた猫が体調を崩している場合は、手袋・マスクを着用して看病し、早めに動物病院と、必要に応じて医療機関へ相談してください。
Q. マダニ予防薬とフィラリア予防薬は一緒に使えますか?
A. 製品によっては、フィラリア・ノミ・マダニ・お腹の寄生虫をまとめて予防できるオールインワンタイプがあります。今の予防状況や持病、他の同居ペットの有無をふまえて、獣医師と最適な組み合わせを相談していきましょう。
監修:窪木 未津子(院長・獣医師)/麻布大学獣医学部卒業、ヤマザキ動物専門学校卒業。群馬県出身。埼玉県・東京都の動物病院での勤務を経て、富士見台どうぶつ病院 院長。獣医師・動物看護師の資格に加え、トリミングやドッグトレーニングの知識・技術をもち、暮らしのちょっとした悩みから病気・ケガの相談まで幅広く対応しています。
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アイキャッチ画像: Photo by Alexas Fotos on Pexels


