2026年07月15日

猫の脱水ってどうやってわかる?夏に気をつけたいサインと見分け方

水を飲む猫のアップ

「暑い日が続くけれど、うちの子ちゃんと水を飲めているかな…」「シニアになってから、なんとなく体が乾いた感じがする気がする」

猫は本来、砂漠にルーツをもつ動物で、あまり水を飲まなくても平気なイメージがありますよね。ですが実際には、夏の暑さや慢性的な腎臓の病気などで、気づかないうちに脱水が進んでいることが少なくありません。特に成猫やシニア猫では、飼い主さんが「なんとなく元気がない」と感じたときには、すでに体の水分が足りていないこともあります。

この記事は 窪木 未津子(院長・獣医師) が監修しています。気になる症状がある場合は自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談してください。本記事では、家庭でできる脱水の簡単チェック方法、夏や腎臓病で脱水が増える理由、飲水を促す工夫、そして受診の目安までを、やさしく解説していきます。

✅ この記事のポイント

  • 首の後ろの皮膚をつまんで戻りが遅ければ脱水のサインの可能性があります
  • 歯ぐきの乾き・尿量の減少・目のくぼみもチェックポイントです
  • 夏の暑さや慢性腎臓病では、知らないうちに脱水が進みやすくなります
  • 水飲み場を複数用意する・ウェットフードを取り入れるなど、日々の工夫が予防のカギです
  • ぐったり・食欲不振・尿が半日以上出ないなどがあれば、早めに動物病院へ相談しましょう

Contents

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猫の脱水ってどんな状態?なぜ気づきにくいの?

結論からお伝えすると、脱水とは体の中の水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が不足している状態です。人間のように「のどが渇いた」と訴えてくれない猫では、飼い主さんが気づいたときには、じわじわと進行していることが多くあります。

まずは、なぜ猫が脱水を起こしやすいのか、体のしくみから見ていきましょう。

猫はもともと水をあまり飲まない動物

猫の祖先は、乾燥した砂漠地帯で暮らしていた動物です。そのため、少ない水分でも体を維持できるようにできており、獲物の体液から水分を得ていた名残で、積極的に水を飲む習慣があまりありません。

現代の室内飼いでは、ドライフード中心の食事が主流ですが、ドライフードの水分量はおよそ10%前後。ウェットフード(約70〜80%)に比べると、食事から得られる水分がぐっと少なくなります。そのぶん、意識して水を飲まないと、体の水分が不足しやすいのです。

脱水しても症状が出にくい

猫は不調を隠す動物です。多少の脱水では、いつも通りに見えることも多く、気づいたときには進行しているケースが少なくありません。ぐったりする・食欲が落ちるといった目立つ症状が出るころには、体の水分がかなり失われていることもあります。

だからこそ、日々のちょっとした観察と、簡単なチェックの習慣がとても大切になります。

特に脱水しやすい猫

次のような猫は、脱水のリスクが高めです。

  • シニア猫(7歳以上)
  • 慢性腎臓病など、持病がある子
  • ドライフードだけを食べている子
  • 夏場、日当たりのよい部屋で過ごす子
  • 嘔吐・下痢が続いている子
  • もともとあまり水を飲まない子
水飲み場で水を飲む猫
Photo by Lera Mk on Pexels

家庭でできる!猫の脱水チェック3つのポイント

「うちの子、脱水してないかな?」と気になったとき、動物病院に行かなくても家庭で簡単に確認できるポイントがあります。ここでは、代表的な3つのチェック方法をご紹介します。

①首の後ろの皮膚をつまむ「皮膚テスト」

最も手軽で、よく使われるチェック方法です。猫の首の後ろ〜肩甲骨のあいだの皮膚を、指で軽くつまみ、そっと持ち上げてからパッと離します。

  • すぐに元に戻る:水分は足りている状態
  • 戻るのに1〜2秒以上かかる:軽度の脱水の可能性
  • テントのように立ったまま戻らない:中〜重度の脱水の疑い

ただし、シニア猫は皮膚の弾力がもともと落ちているため、戻りがやや遅めに見えることがあります。「普段の状態」を知っておくことが、変化に気づくコツです。健康なときに一度試して、感覚を覚えておくと安心です。

②歯ぐきや口の中の湿りぐあいを見る

もう一つのチェックポイントが、歯ぐきの湿りぐあいです。健康な猫の歯ぐきは、ピンク色でしっとりと湿っています。指でそっと触れたときに、次のような状態なら注意が必要です。

  • 歯ぐきが乾いていて、指が張りつくような感じがする
  • 唾液が糸を引くように、ねばっとしている
  • 歯ぐきの色が白っぽい、または濃い赤・紫っぽい

あわせて、歯ぐきを軽く指で押して離したときに、白くなった部分がピンクに戻るまでの時間(毛細血管再充満時間)を見る方法もあります。2秒以内に戻れば正常、それより遅ければ循環が悪くなっている可能性があります。

③尿の量・回数・色をチェックする

脱水が進むと、体は水分を体内にとどめようとして、尿の量が減り、色が濃くなります。トイレ掃除のときに、次のような点を意識してみてください。

  • おしっこの塊がいつもより小さい・少ない
  • 色が濃い黄色〜オレンジっぽい
  • 1日のトイレ回数が減っている
  • 逆に、慢性腎臓病では薄い尿がたくさん出ることも

猫砂の色や量は、体調を映す大切なバロメーターです。「なんとなく少ないかも」と感じたら、その日から数日、意識して観察してみましょう。

💡 ワンポイント

目のくぼみも、脱水が進んだときのサインの一つです。「なんとなく目が落ちくぼんで見える」「顔つきが変わった気がする」と感じたら、他のチェックとあわせて確認してみてください。

脱水チェックの見分け方まとめ表

ここまでのチェックポイントを、比較しやすい形でまとめました。日々の観察や、受診前の判断材料としてお使いください。

チェック項目健康な状態脱水の疑い
首の皮膚のつまみ戻りすぐ戻る戻りが遅い、立ったまま
歯ぐきしっとり湿ってピンク色乾いている、ねばつく
尿の量・色いつも通り、薄い黄色量が減る、濃い色
目・顔つきはっきりして生き生きしているくぼんで見える、ぼんやり
元気・食欲いつも通り元気がない、ぐったり

複数のサインが当てはまるときは、脱水が進んでいる可能性があります。特に元気や食欲の低下を伴う場合は、様子を見ずに動物病院へ相談してください。

夏や腎臓病で脱水が増える理由

猫の脱水は、季節や年齢、持病によっても起こりやすさが変わります。特に注意したい「夏」と「慢性腎臓病」について、それぞれの背景を見ておきましょう。

夏は室内でも水分が失われやすい

夏場は気温が高く、猫も呼吸や体表からじわじわと水分を失っています。エアコンをつけていても、湿度が低いと乾燥が進みやすく、こまめに水を飲まないと不足しがちです。

また、暑さで食欲が落ちてウェットフードやおやつからの水分摂取が減ったり、ぐったりして水飲み場まで移動するのが億劫になったりすることも。夏バテと脱水はセットで進みやすいので、注意が必要です。あわせて、猫の熱中症についての記事も参考にしてみてください。

慢性腎臓病では「薄い尿がたくさん出る」

シニア猫に多い慢性腎臓病では、腎臓が尿を濃縮する力が落ちてくるため、体内に水分をとどめておけず、薄い尿が大量に出るようになります。飼い主さんからすると「よく水を飲む・よくおしっこをする」と映るのですが、実際には飲む量よりも出ていく量が上回りやすく、慢性的な脱水状態になりがちです。

「最近水をよく飲むな」「トイレの砂が重くなった気がする」と感じたら、腎臓病のサインである可能性もあります。健康診断で血液検査・尿検査を受けておくと安心です。

嘔吐・下痢でも一気に脱水が進む

吐いたり下痢をしたりすると、消化管から大量の水分と電解質が失われます。特に子猫やシニア猫では、1日続いただけでも脱水が急速に進むことがあります。「そのうち治るだろう」と様子を見すぎず、繰り返すときは早めに受診しましょう。

床でくつろぐシニア猫
Photo by P Hsuan Wang on Pexels

飲水を促す工夫|おうちでできる予防

脱水を防ぐ一番のコツは、毎日の飲水量を少しでも増やす工夫をすることです。猫は好みがはっきりしている動物なので、いくつか試してわが子に合う方法を見つけてあげましょう。

水飲み場を「増やす・分散させる」

まず取り入れやすいのが、水飲み場を複数用意することです。1か所だけだと、猫が「行くのが面倒」と感じて飲む回数が減ってしまうことがあります。次のようなポイントを試してみてください。

  • リビング、寝室、廊下など、生活動線上に複数設置する
  • フードのすぐそばだけでなく、少し離れた場所にも置く
  • トイレの近くは避ける(猫が嫌がりやすい)
  • キャットタワーの上など、高い場所にも置いてみる

器の素材・形を変えてみる

プラスチックの器はにおいが移りやすく、嫌がる子もいます。陶器・ガラス・ステンレスなど、素材の違う器をいくつか用意して、好みを探ってみましょう。また、ひげが器のふちに当たるのを嫌う子もいるので、口の広い浅めの器がおすすめです。

水の種類・温度に工夫を

「新鮮な水」であることが、猫にとってはとても大切です。1日2〜3回は水を入れ替え、器も洗ってから注ぎましょう。冷やしすぎず、常温〜少しぬるめの水のほうが飲みやすい子もいます。流れる水が好きな子には、猫用の循環式給水器も選択肢になります。

食事から水分を取り入れる

ドライフード中心の子には、ウェットフードを一部取り入れるのも効果的です。1日1回だけウェットに変える、ドライにお湯やぬるま湯を少し足してふやかす、といった工夫でも、無理なく水分量を増やせます。

また、無塩のささみのゆで汁や、猫用スープタイプのおやつも、水分補給の助けになります。持病のある子は、事前にかかりつけの獣医師に相談してから取り入れてください。

💡 ワンポイント

「1日にどれくらい飲めばいいの?」と聞かれることがよくあります。目安は体重1kgあたり40〜60ml程度ですが、フードの種類や気温で変わります。まずは器の水の減り具合を毎日眺める習慣から始めてみてください。

受診の目安|こんなときは動物病院へ

「家で様子を見ていいのか、すぐ病院に行くべきか」——迷ったときの判断基準をまとめました。少しでも不安があれば、電話で相談するだけでも安心につながります。

早めに受診したいサイン

次のような様子が続くときは、早めに動物病院を受診しましょう。

  • 皮膚のつまみ戻りが明らかに遅い
  • 歯ぐきが乾いている、ねばついている
  • 尿の量や回数が普段より減っている
  • 水をあまり飲まず、食欲も落ちている
  • 逆に、水を異常に欲しがりトイレの回数も増えた
  • シニア猫で、なんとなく元気がない日が続く

すぐ受診したいサイン

次のような場合は、様子を見ずに動物病院へ連絡してください。

  • ぐったりして呼びかけへの反応が鈍い
  • 半日以上おしっこが出ていない
  • 嘔吐や下痢を繰り返している
  • 歯ぐきの色が白っぽい・紫っぽい
  • ふらつく、立ち上がれない
  • 目が落ちくぼんで見える

⚠️ こんなときは要注意

脱水と一緒に「元気がない」「食欲がない」「嘔吐や下痢がある」「尿が出ない」といった症状がそろっているときは、腎臓や尿路のトラブル、熱中症、感染症などが隠れている可能性があります。自己判断で水を無理に飲ませようとせず、まずは動物病院に電話でご相談ください。

動物病院でできること

診察では、身体検査に加え、血液検査や尿検査などで脱水の程度と原因を調べます。必要に応じて、皮下点滴や静脈点滴で水分と電解質を補ってあげることもあります。慢性腎臓病など背景の病気が見つかった場合は、食事療法や自宅での皮下点滴など、生活に合わせた治療をご提案します。

富士見台どうぶつ病院では、一般診療に加えて泌尿器科の専門外来もご用意しています。「水をよく飲む」「尿の状態が気になる」「腎臓の数値が気になる」といったお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。シニア期の体調変化については、シニア猫の食欲低下についてのコラムもあわせてご覧いただければと思います。

まとめ

猫の脱水は、飼い主さんが気づかないうちにじわじわと進みやすい体調変化です。特に夏場や、シニア期・慢性腎臓病のある子では、日常的にリスクが高まります。首の皮膚のつまみ戻り・歯ぐきの湿りぐあい・尿の量と色という3つのポイントを、日々の観察に取り入れてみてください。

予防のカギは、なんといっても毎日の飲水量を少しでも増やす工夫です。器を増やす・素材を変える・ウェットフードを取り入れるなど、小さな工夫の積み重ねが、体の水分バランスを支えてくれます。

そして、いつもと違うサインを感じたら、様子を見すぎずに動物病院へ。猫は不調を隠す名人ですが、飼い主さんの「なんとなく」の直感は、意外と当たっているものです。気になることがあれば、遠慮なくご相談くださいね。

よくある質問

Q. 猫が1日に飲むべき水の量はどのくらいですか?

A. 一般的な目安は、体重1kgあたり1日40〜60ml程度とされます。ただしフードの種類(ドライかウェットか)や気温、運動量で必要量は変わります。器の減り具合を毎日眺め、いつもと比べて極端に少ない・多いと感じたときは相談してみてください。

Q. 猫が水を全然飲まないのですが、無理にでも飲ませたほうがいいですか?

A. スポイトなどで無理に口の中に水を流し込むのは、誤嚥(気管に入る)のリスクがあるので避けてください。まずはウェットフードやふやかしフード、水の器の位置・素材を変えるなどの工夫を試し、それでも改善しない・元気食欲もないときは動物病院にご相談ください。

Q. シニア猫の皮膚は戻りが遅いのですが、いつも脱水ということですか?

A. 加齢で皮膚の弾力が低下するため、健康なシニア猫でも戻りがやや遅めに見えることがあります。大切なのは「普段のわが子の状態」を知っておくこと。歯ぐきの湿り、尿の量、元気・食欲などとあわせて総合的に判断しましょう。

Q. 慢性腎臓病の猫は、自宅で皮下点滴をしたほうがいいですか?

A. 病期や体調によっては、自宅での皮下点滴が生活の質を保つのに役立つ場合があります。ただし必要性・頻度・量は個体差が大きく、必ず獣医師の指示のもとで行う必要があります。まずは診察を受け、相談のうえ判断しましょう。

Q. 水をよく飲むようになったのですが、脱水と関係ありますか?

A. 水をよく飲むこと自体は良いことに見えますが、慢性腎臓病や糖尿病などが背景にあると、体が水分を保てなくなり「飲んでも脱水」の状態になることがあります。急に飲水量が増えた場合は、健康診断や血液・尿検査を受けることをおすすめします。

監修:窪木 未津子(院長・獣医師)/麻布大学獣医学部卒業、ヤマザキ動物専門学校卒業。群馬県出身。埼玉県・東京都の動物病院での勤務を経て、富士見台どうぶつ病院 院長。獣医師・動物看護師の資格に加え、トリミングやドッグトレーニングの知識・技術をもち、暮らしのちょっとした悩みから病気・ケガの相談まで幅広く対応しています。

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