涙やけ
2024年07月06日

犬の涙やけとは?原因・対処法や、今すぐできる予防法をわかりやすく解説

涙によって目元の毛が変色してしまう現象を「涙やけ」といいます。短頭種や小型犬によく見られる涙やけですが、具体的にどのような原因で起こるのか、どのようにして対処すればいいのか気になっている方も多いのではないでしょうか。

今回は、犬の涙やけの原因や症状、対処法について詳しく解説します。今すぐできる予防法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

犬の涙やけとは

犬の涙やけとは、目からあふれる涙の成分により、目元の毛が褐色に変わる状態のことです。涙はまぶたにある涙腺から分泌され、目の表面を潤した後、涙点→涙小管→涙嚢(るいのう)→鼻涙管を通って鼻に流れていきます。

しかし、なんらかの原因で涙の過剰分泌や涙の通り道に異常が起こると、鼻に流れていくはずの涙が目からあふれてしまいます。その結果、目の下が常に濡れた状態になり、涙やけにつながるのです。

犬の涙やけの原因

涙やけが起こる主な原因として、以下の5つが挙げられます。

<犬の涙や毛の原因>

  • 異物の混入
  • アレルギー
  • 鼻涙管の異常
  • マイボーム腺機能の異常
  • ほかの目の病気

なぜわんちゃんに涙やけが起こるのか、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。

異物の混入

目にごみやまつ毛などの異物が混入している場合、涙の分泌量が多くなり、涙やけにつながることがあります。そのほか、逆さまつげや目元の毛によって眼球が刺激され、通常よりも多くの涙が分泌されてしまうケースも珍しくありません。

アレルギー

食べ物や花粉、ハウスダストなどによるアレルギー症状も、涙やけを引き起こす原因のひとつです。目にかゆみや炎症を起こすと、涙の量が増えて涙やけにつながりやすくなります。

涙の排泄経路の異常

涙は目から鼻へと流れていきますが、排泄経路のどこかに異常があると、涙が目からあふれてしまいます。涙の排泄に異常をきたしている場合、以下のような病気が疑われます。

病名 概要
小涙点症 先天的に涙点が狭い疾患
涙点閉塞症 先天的に涙点が閉鎖している疾患
涙嚢炎 涙嚢や鼻涙管に炎症が起こる疾患
鼻涙管閉塞 先天的な理由や涙嚢炎などにより、鼻涙管が閉塞してしまう疾患

マイボーム腺機能の異常

まぶたの縁には「マイボーム腺」という油分を分泌する部分があり、この油には涙の安定性を保つ働きがあります。しかし、なんらかの理由によってマイボーム腺の機能が落ちると、涙がまぶたを超えて目の外にあふれてしまうのです。

ほかの目の病気

「角膜潰瘍(かくまくかいよう)」や「緑内障」などの目の病気を患っている場合、涙の量が多くなることがあります。そのほか、アレルギーや細菌感染による「結膜炎」も涙の分泌量を増加させ、涙やけを引き起こすケースが見られます。

涙やけになりやすい犬種

顔の構造や体のつくりなどから、以下のような犬種は涙やけを起こしやすいといわれています。

項目 犬種
短頭種 シーズー、パグ、フレンチブルドッグなど
小型犬 チワワ、トイプードル、ポメラニアンなど
アレルギーになりやすい犬種 柴犬、アメリカンコッカースパニエル、ミニチュアダックスフンドなど

シーズーやパグなどの短頭種は、眼瞼内反症(がんけいないはんしょう)、いわゆる逆さまつげになりやすい傾向があります。さらに眼球の突出が大きく、生まれつき鼻涙管が狭かったり塞がっていたりするケースが多いことも、短頭種が涙やけになりやすいといわれる理由です。

チワワやトイプードルなどの小型犬は、先天的に鼻涙管が狭いまたは閉鎖していることが多く、鼻涙管閉塞による涙やけがよく見られます。

また、柴犬やミニチュアダックスフンドなどアレルギーになりやすい犬種も注意が必要です。アレルギー反応で涙の量が増え、涙やけを起こしてしまうことがあります。

犬の涙やけの症状

次のような症状・状態が見られる場合、わんちゃんが涙やけを起こしている可能性があります。

<犬の涙やけの主な症状・状態>

涙がたくさん出ている
目やその周りが充血している
痛そうに何度もまばたきしている
まぶしそうに目を細めている
膿性の黄色い目やにが付いている

涙やけが起きているということは、涙を正常に分泌・排泄できていないということです。重大な疾患を抱えている可能性もありますので、早めに動物病院を受診しましょう。

犬の涙やけの対処法

愛犬に涙やけが見られた場合、まずは涙をこまめに拭き取りましょう。涙で濡れた状態が続くと、細菌感染につながる恐れがあり、結果として皮膚炎を患ってしまうこともあります。

ティッシュペーパーは目を傷つける可能性があるため、コットンやガーゼを使って優しく拭き取るのがおすすめです。被毛が固まっている場合には、濡らしたコットンやガーゼで柔らかくした後、目の細かいコームでとかすことで拭き取りやすくなります。

上記はあくまで一時的な措置であり、涙やけの原因自体を解決する対処法ではありません。根本的な問題を解決するためには、動物病院を受診し、それぞれの原因に応じた適切な治療を受ける必要があります。

原因別に見る涙やけの治療法

以下の表に、涙やけの治療法を原因別でまとめましたので、そちらもあわせてご覧ください。

涙やけの主な原因 主な治療法
眼瞼内反症(逆さまつ毛) 眼球を刺激しているまつ毛の除去、外科手術
アレルギー アレルゲンの特定、食事の変更、抗アレルギー薬の投与
涙嚢炎、鼻涙管閉塞 鼻涙管の洗浄、抗生剤の内服薬・点眼薬
マイボーム腺機能不全 目の周りのケア、抗生剤の内服薬・点眼薬
角膜潰瘍、ブドウ膜炎、緑内障 抗生剤の内服薬・点眼薬、外科手術

なお、わんちゃんの状態によっては目の専門病院で特殊な処置や手術が必要になることもあります。治療内容については、受診する動物病院でご確認ください。

犬の涙やけの予防法

涙やけは先天的な理由や顔の構造上の問題に起因することが多く、予防が難しいケースがほとんどです。しかし、涙をこまめに拭き取れば、毛の変色を防ぐことはできます。

また、わんちゃんの目元の毛が長い場合は、トリマーに整えてもらうといいでしょう。目の周りの毛が長いと、眼球が刺激されて涙があふれてしまう可能性があるため、定期的にトリミングを行うのも効果的です。

もうひとつ気にかけてもらいたいのが食事の内容で、わんちゃんの体に合っていない食べ物を与えると、アレルギー反応によって涙が大量に出ることもあります。食物アレルギーを起こしやすい食材を避けるなど食事の内容にも気を配れば、涙やけのリスクを抑えることが可能です。

まとめ

わんちゃんの涙やけ自体は病気ではありません。しかし、何かしらの病気によって涙やけを起こしている可能性があるため、早めに対処することが大切です。

また、涙やけを放置していると、皮膚の炎症や感染症などを引き起こす恐れがあります。本記事で紹介した症状にひとつでも当てはまる場合は、お近くの動物病院の獣医師に相談してみましょう。

「富士見台どうぶつ病院」では、ご家庭で飼われているペット動物たちの一般診療や健康診断を行っています。わんちゃんの涙やけをはじめ、少しでも気になることがありましたら、当院へお気軽にご相談ください。

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