2024年07月20日

犬によく見られる膿皮症とは?原因や症状、治療法について解説

わんちゃんによく見られる皮膚病のひとつに「膿皮症(のうひしょう)」があります。皮膚に細菌が感染することでかゆみや赤み、脱毛などを引き起こす病気ですが、その背景にはほかの病気が隠れていることも少なくありません。

今回は、犬の膿皮症の原因や症状、治療法について詳しく解説します。おすすめの予防法も紹介しますので、愛犬の日々のケアにお役立てください。

 

 

膿皮症とは

膿皮症とは、犬の皮膚に常在する細菌(主にブドウ球菌)が増殖することで起こる皮膚病です。何らかの原因で皮膚のバリア機能が低下し、細菌感染による皮膚炎が生じると、かゆみ・赤み・脱毛といったさまざまな症状が現れます。これが「膿皮症」という病気です。

膿皮症は、全身のどこにでも起こる皮膚病ですが、特に背中・腹部・指の間などで発症するケースが多く見られます。その背景にはほかの病気が隠れていることもあるため、愛犬の膿皮症が疑われる場合は、早めに獣医師に相談しましょう。

犬の膿皮症の原因

前述のとおり、犬の膿皮症は皮膚のバリア機能が低下し、細菌が過剰に増えることで発症すると考えられています。皮膚のバリア機能が落ちる要因として、以下のような基礎疾患が背景にあることが多いです。

<犬の膿皮症を引き起こす根本的な原因>

  • アレルギー疾患…アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど
  • 内分泌疾患(ホルモンの異常)…甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など


また、皮膚のバリア機能が未熟な子犬での発症も多く見られます。膿皮症はさまざま原因が考えられ、ほかにも同じような状態になる病気もあるため、注意深く診断しなければいけません。

犬の膿皮症の症状

膿皮症は、症状が起こる部位によって次の3つのタイプに分類されます。

<犬の膿皮症の症状>

  • 表面性膿皮症
  • 表在性(浅在性)膿皮症
  • 深在性膿皮症

それでは、各タイプの特徴を順番に見ていきましょう。

表面性膿皮症

表面性膿皮症とは、皮膚の表面でのみ細菌が増殖し、かゆみや赤みなどが生じる軽度の皮膚炎です。このタイプの膿皮症は、抗菌シャンプーや外用薬による治療でよくなることがほとんどです。

表在性(浅在性)膿皮症

表在性(浅在性)膿皮症とは、表皮付近で起こる炎症です。皮膚の一部または広範囲にかゆみや赤み、丘疹(きゅうしん)・膿疱(のうほう)・かさぶた・脱毛などが現れます。


また、皮膚の炎症が長く続いた場合、色素沈着による黒ずみが発生することもあります。犬の皮膚炎で最もよく見られるのは表在性膿皮症です。

深在性膿皮症

深在性膿皮症とは、皮膚の奥深くにある真皮と皮下組織で起こる皮膚炎です。このタイプの膿皮症は、病変部の炎症が強く、かゆみに加えて強い痛みや赤みが生じることもあります。

そのほかの主な症状としては、おできのような腫れ、出血や膿が伴うただれなどが挙げられます。深在性膿皮症の治療は長期化するケースが多いため、最後まで根気良く続けることが大切です。

犬の膿皮症の診断方法

動物病院では、膿皮症を診断するために「皮膚押捺検査」を行います。皮膚押捺検査とは、表皮に透明なスライドグラスやセロハンテープを押し付け、皮膚の表面にいる細菌を顕微鏡で観察する検査です。

皮膚病にはさまざまな種類があり、症状が似ているものも多いため、原因となる細菌を調べて的確に診断しなければいけません。そのほか、膿皮症の原因を究明することを目的に、被毛検査やアレルギー検査などを行います。

また、膿皮症がなかなか治らない場合や深在性膿皮症の場合には、抗菌薬による治療が推奨されます。このケースでは、原因となる細菌に対して有効な抗生物質を判定するため、細菌培養試験・薬剤感受性試験を行うのが一般的です。

犬の膿皮症の治療法

膿皮症の治療は、病気の状態に合わせて行います。軽度の膿皮症では、抗菌シャンプーや外用薬を使用するのが一般的です。

重度の場合や抗菌シャンプー・外用薬に反応がない場合は、抗菌薬の内服・注射による治療を行います。深在性膿皮症の場合、皮膚の深いところに病変があるため、体の外側からの治療のみではなかなか治りません。

しかし、抗菌薬を投与して体の内側から病原菌を攻撃することで、より大きな治療効果が期待できるのです。治療を継続しても良化しないときには、細菌培養検査・薬剤感受性試験を行い、その結果に基づいて抗菌薬を変更する場合もあります。ほかの病気が併発していれば、そちらの治療も必要です。

犬の膿皮症の治療期間

一般的に、犬の膿皮症は適切な治療を行えば、1ヶ月以内に終息することが多いです。しかし、原因となる基礎疾患の影響により、治療に時間がかかったり再発を繰り返したりすることもあります。

なお、抗菌薬の内服による治療を行う場合には、皮膚の症状が治まった後もしばらく薬を与えなくてはいけません。自己判断で休薬すると、再発の危険性や耐性菌の発生リスクが高まるため、必ず獣医師の指示のとおりに治療を行うようにしてください。

犬の膿皮症の予防法

膿皮症の予防において大切なのは、原因となる「ブドウ球菌」が増殖しにくい環境を整えることです。そのためには、以下のような方法で皮膚を清潔に保つことが重要になります。

予防法 目的
適切な方法でシャンプーをする 皮膚のバリア機能を健やかに保つため
定期的にブラッシングをする 被毛の汚れやフケなどを取り除くため
定期的にトリミングをする 皮膚の通気性を保つため
良質なフードを与える・サプリメントを活用する 健康管理によって膿皮症のリスクを抑えるため

膿皮症の予防法のひとつに「シャンプー」がありますが、過剰な洗浄など間違った方法でケアをすると、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。かえって細菌が増殖・感染しやすくなってしまうため、まずはかかりつけの獣医師に相談し、愛犬に合ったシャンプーのやり方や種類について確認することが大切です。

また、わんちゃんの皮膚や行動に異常が見られたときは、なるべく早く動物病院を受診しましょう。早めに動物病院に連れていけば、膿皮症の早期発見や症状悪化の予防につながります。

犬において膿皮症は、よく見られる皮膚病のひとつです。心身ともに非常にストレスがかかる病気のため、日頃から愛犬の様子をよく観察し、異常が見られたらすぐに獣医師に相談するようにしてください。

まとめ

膿皮症は、犬においてよく見られる皮膚病のひとつです。その背景にはほかの病気が隠れていることもあるため、皮膚の状態だけではなく、全身状態に気を配ることが求められます。

また、細菌感染や基礎疾患に起因する膿皮症は、再発を繰り返すケースも少なくありません。そのため、症状が改善した後も定期的なシャンプーやブラッシングなどを行い、再発予防に努めることが大切です。特に異常が見られないというときも安心せず、わんちゃんが快適な日々を過ごせるように、日頃から皮膚を清潔に保つことを心がけましょう。

「富士見台どうぶつ病院」では、ペット動物の健康をサポートするために一般診療や健康診断、トリミングなどのサービスを提供しています。精密検査を通じて早急な原因究明を行い、ベストな治療をご提案いたしますので、愛犬の体調が気になる方は当院へお越しください。

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