犬にも認知症がある?原因や症状を把握して早期発見・治療に取り組もう
人間と同様に、犬の寿命も延びていますが、それに伴い「犬の認知症」が増えていることをご存知でしょうか。大切な愛犬と長く楽しい時間を過ごしていくためには、認知症に対する知識を深めておくことが大切です。
今回は、犬の認知症の原因や症状、治療法などについて詳しく解説します。飼い主さまに注意してほしいポイントや予防法にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
犬の認知症とは
認知症とは、老化によって脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、さまざまな行動変化が見られるようになる状態をいいます。夜間に起きている時間が長くなったり、トイレの場所を忘れてしまったりするなど、日常生活に支障をきたすほどの行動変化が見られるのが特徴です。
犬の認知症がはじまる年齢
犬の認知症は、10歳を超える頃からはじまることが多く、12歳以上から急増していきます。これらの年齢はあくまで目安であり、10歳未満で発症するわんちゃんもいれば、20歳を超えても認知症にならないわんちゃんもいます。そのため、日頃から愛犬の様子を観察することが大切です。
認知症になりやすい犬種
一般的に、柴犬などの日本犬は認知症になりやすいといわれています。その理由はまだ解明されていませんが、ほかの犬種に見られる致命的な疾患になりにくく、認知症の症状が認められやすいことが理由のひとつとして考えられます。
犬の認知症の原因
犬の認知症の原因はまだ明らかになっていませんが、以下のことが原因ではないかといわれています。
<犬の認知症の原因>
- 老化や病気に伴う脳の萎縮
- 特定のたんぱく質の蓄積
老化や病気の影響で脳が萎縮すると、認知機能が低下します。その結果、認知症が起こるというのが一般的な見解です。
また、脳内に特定のたんぱく質が蓄積し、神経細胞がダメージを受けることで認知症につながるとも考えられています。
犬の認知症の症状
以下のような症状が見られる場合、愛犬の認知症が疑われます。
項目 | 主な症状 |
見当識障害 | ・家の中や慣れた場所で迷子になる ・狭いところに入りたがる ・壁や天井などをじっと見つめている ・親しい人や生活パターンがわからなくなっている |
社会的交流の変化 | ・飼い主が話しかけたりなでたりしても反応しない ・同居する家族や動物に対して攻撃的になる |
睡眠サイクルの変化 | ・昼寝が増えて夜間に眠らなくなる ・夜中に起きて徘徊する ・夜間に意味もなく吠える |
不適切な排泄(トレーニングされた行動の変化) | ・トイレ以外の場所で排泄してしまう ・排尿・排便のコントロールができなくなっている ・自分の名前や習得しているコマンドに反応しない |
活動性の変化 | ・ぐるぐると同じ場所を回る ・同じ行動を繰り返す ・家の中をうろうろと徘徊する ・遊ばなくなる(無関心・無気力になる) |
犬の認知症で見られる症状は、人間の認知症で見られる症状と似ています。しかし、わんちゃんが上記のような症状を見せても、「年をとったから仕方がない」「うちの犬は気まぐれだから」と考えてしまう方は少なくありません。
認知症に早く気づくことができれば、大切な愛犬と長く楽しい時間を過ごすことができます。もし愛犬に上記のような症状が見られた場合には、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
犬の認知症の治療法
現時点では、犬の認知症に有効な治療法はありません。認知症が発症した場合は、以下のような治療で症状の緩和を図ります。
<犬の認知症の治療法>
- 食事療法
- 薬物療法
- 生活環境の改善
ここからは、それぞれの治療法について解説していきます。
食事療法
わんちゃんが認知症になった場合、次のような成分が含まれる処方食やサプリメントの利用が推奨されます。
成分 | 期待できる効果 |
DHA(ドコサヘキサエン酸) | 脳の神経細胞の活性化、傷ついた神経細胞の修など |
EPA(エイコサペタエン酸) | 脳神経の機能の向上など |
ビタミンE | 抗酸化作用など |
レシチン | 認知症・痴呆の予防効果など |
これらの成分を摂取することにより、認知症の症状の進行を遅らせたり、緩和させたりすることが期待できます。
薬物療法
認知症の症状に効果がある抗うつ剤や精神安定薬が処方されることもあります。夜鳴きや徘徊などの症状が見られる場合は、睡眠薬などで対応できますが、結果として認知症を進行させてしまう可能性もあるので注意が必要です。お薬での治療を検討するときは、獣医師とよく相談するようにしましょう。
生活環境の改善
現在の医療では、犬の認知症を完全に止めることはできません。そのため、わんちゃんと飼い主さまの双方が快適に暮らせるよう、生活しやすい環境を整えます。
例えば、犬用サークルで行動範囲を制限したり、家具の角にクッションを設置したりすることで安全性を高められます。認知症の症状やお住まいの環境はそれぞれ異なりますので、獣医師と相談しながら適切な環境整備を行いましょう。
犬の認知症は予防できることもある
犬の認知症は「加齢」が要因とされているため、完全に予防することは難しいです。しかし、後述する予防法を行えば、ある程度症状の進行を遅らせたり緩和させたりすることが期待できます。
<犬の認知症の予防法>
- 日光浴をさせる
- 積極的に運動させる
- スキンシップを十分にとる
- サプリメントを活用する
以下では、紹介した4つの予防法について詳しく解説します。
日光浴をさせる
適度な日光浴は、体内時計の改善や気分転換につながります。その結果、脳に刺激を与えることができ、認知症の予防効果が期待できます。
積極的に運動させる
筋肉が衰えて寝たきりになってしまうと、認知症が進行しやすくなります。そのため、積極的に運動させることも大切です。日中にしっかりと運動させれば、昼夜逆転の対策にもつながるため、認知症に対して有効な予防法といえるでしょう。
スキンシップを十分にとる
飼い主さまとのスキンシップは、わんちゃんとって良い刺激となります。短い時間でも構いませんので、愛犬の体をなでる・ブラッシングを行う・話しかけるなど、毎日スキンシップをとることを心がけましょう。
サプリメントを活用する
DHAやEPAには、脳の神経細胞を活性化させる働きがあり、これらの成分を摂取することで認知症の予防が期待できます。どちらの成分も青魚に多く含まれていますが、より手軽に摂取したいという方はサプリメントを活用するのがおすすめです。
また、抗酸化作用のあるビタミンEをはじめ、認知症の予防に効果があると考えられている栄養素はいくつか存在します。この機会にわんちゃんの食生活を見直し、必要であればサプリメントを取り入れると良いでしょう。
まとめ
犬の認知症は加齢とともに発症しやすくなりますが、年齢が若くても発症することがあります。しかし、初期段階での発見が難しく、また根本的な治療法がありません。だからこそ、日頃から愛犬の様子を観察し、適切なケアをしていくことが大切です。
まずは愛犬の生活習慣を見直し、必要に応じて日光浴や運動、サプリメントなどを取り入れていきましょう。すでに認知症の症状が見られる場合には、早めに動物病院を受診するようにしてください。
「富士見台どうぶつ病院」では、ご家庭で飼われているペット動物たちの一般診療や健康診断を行っています。愛犬の行動を見て気になる点がありましたら、当院までお気軽にご相談ください。