2024年05月20日

🐈FIPについて①🐈

FIP(猫伝染性腹膜炎)について当院での治療法や病気の原因など詳しくまとめたコラムになります🏥

 

FIPの原因と予防法|富士見台どうぶつ病院が解説

FIP(猫伝染性腹膜炎)の原因

FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルス(FCoV)が突然変異し、強毒性のFIPウイルス(FIPV)になることで発症します。多くの猫が保有している猫コロナウイルス自体は重篤な症状を引き起こすことはありませんが、何らかのきっかけで突然変異を起こし、FIPウイルスになると致死率の高い病気を引き起こします。

突然変異の原因は明確になっていませんが、以下のような要因が考えられています。

  • ストレスによる免疫力の低下
  • 遺伝的要因
  • 年齢(若齢猫に多い)

猫コロナウイルスは主に猫の糞便から排出され、他の猫が口や鼻から取り込むことで感染が広がりやすいとされています。感染経路としては、以下のようなケースが考えられます。

  1. 外飼い(不特定多数の猫と接触)
  2. 多頭飼い(感染猫からの伝播)
  3. 野良猫のお迎え(感染リスクが高い)
  4. 保護施設やブリーダーからのお迎え(多頭飼育環境)

FIPを予防するために飼い主ができること

FIPの発症を防ぐには、猫コロナウイルスに感染させないことが最も効果的です。そのために飼い主ができる予防策として、以下のようなことが挙げられます。

1. 外飼いや多頭飼いを避ける

感染リスクを減らすために、完全室内飼いを徹底し、多頭飼いは避けましょう。やむを得ず多頭飼いする場合は、感染が疑われる猫と他の猫の生活スペースを分けるなどの工夫が必要です。

  • 新しく猫を迎え入れる際は、既存の猫と接触させる前に約3ヶ月間の隔離期間を設けましょう。
  • 猫同士の共有スペースを減らし、トイレやごはん皿、水飲み場などは別々に用意しましょう。

2. ストレスの少ない環境を整える

ストレスは免疫力を低下させ、FIP発症のリスクを高めます。猫が快適に過ごせるよう、適切な室内環境の整備やお世話を心がけましょう。

  • 猫の数に合わせて十分なスペースを確保し、隠れ家やキャットタワーを設置するなど、猫が安心できる環境を作りましょう。
  • トイレは清潔に保ち、猫の数より多めに用意しましょう。ベントナイト使用の猫砂もおすすめです。
  • 定期的なブラッシングやマッサージで猫とのスキンシップを図り、ストレス軽減に努めましょう。
  • 猫が好む玩具や興味を引く環境エンリッチメントを取り入れ、ストレス発散を促しましょう。

3. 定期的な健康チェックとPCR検査の実施

猫の健康状態を定期的に確認し、早期発見・早期治療に努めましょう。

  • 毎日の観察で、食欲、活動量、排泄物などに変化がないかチェックしましょう。
  • 年1~2回の定期健診で、獣医師による総合的な健康チェックを受けましょう。
  • 多頭飼育や新しい猫を迎え入れる際は、PCR検査で猫コロナウイルスの感染状況を確認しましょう。

4. バランスの取れた食事と適度な運動

免疫力を高めるために、栄養バランスの取れた食事を与え、適度な運動を促しましょう。

  • 年齢や健康状態に合わせた質の高いキャットフードを選びましょう。
  • 食事量や回数は猫の状態に合わせて調整し、肥満を予防しましょう。
  • 猫じゃらしやレーザーポインターなどで遊ぶ時間を設け、運動不足を解消しましょう。
  • キャットタワーやスクラッチャーを設置し、自発的な運動を促しましょう。

5. 他の感染症予防のためのワクチン接種

猫白血病ウイルスやカリシウイルスなどの感染症は免疫力を低下させ、FIPの発症リスクを高めます。これらの感染症を予防するためのワクチン接種を適切に行いましょう。

  • 生後2~3ヶ月頃から、子猫用のワクチンプログラムを開始しましょう。
  • 成猫では、年1回の定期ワクチンで免疫力を維持しましょう。
  • 外飼いや多頭飼育の場合は、獣医師と相談の上、追加のワクチン接種を検討しましょう。

現在、FIP自体を予防する効果的なワクチンはありませんが、上記の予防策を講じることで発症リスクを下げることができます。飼い主が日頃から猫の健康管理に気を配り、ストレスの少ない環境を整えることがFIP予防の鍵となります。

まとめ

FIPは猫コロナウイルスの突然変異によって引き起こされる危険な病気です。感染経路を断ち、猫の免疫力を高めることが予防に繋がります。外飼いや多頭飼育を避け、ストレスの少ない生活環境を整えることが重要です。また、定期的な健康チェックとバランスの取れた食事、適度な運動も欠かせません。もしFIPを発症してしまった場合は、早期発見・早期治療が重要です。

富士見台どうぶつ病院では、抗ウイルス薬「フェリスビル(FELISVIL,GS-441524)」を用いたFIP治療を行っています。FIPが疑われる症状がある場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。

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